生配信8 ゲームのお誘い
昼配信が終わり、タバコを1本吸おうとすると電話がかかってくる。
「マジかよ」
スマホの画面を見ると『佐々木美玲』の文字が。
あの人、本気で言ってたの?
俺の配信中に遊びに来た彼女。リスナーさんの余計な一言で変な誤解を与え「配信後に説教をする」と言われていた。
その場限りの一言と思い、あまり気にしていなかったのだが、まさか本当に説教しにくるとは。
ってか、俺は「巨乳も貧乳も大好き」と宣言したはずなのだが?
………切っちゃお。
「………」
咥えているタバコに火をつけようとする。
プルプルプル!
ビック!
1度切ったはずの佐々木さんからまた電話がかかってきた。
出る………いや、切っちゃお。
「………『ジュッボ』ふぅー」
火をつけ一息。
はあ、うま『ピコン! ピコン!』………今度はメッセージが飛んできた。
ロック画面のバーナーを長押しし、既読をつけないようにしてメッセージを確認する。
『滝くん? どうして電話に出てくれないの?』
『2度も電話したんですよ? 今度はちゃんと出てくださいね?』
何、このメッセージ? 今度は、ってことは、
プルプルプル!
これに出なくてはいけないのか? んんん、いや、まだ出なくていいでしょ。切っちゃお。
「ふぅー」
吸っているタバコの灰を灰皿に落とす。すると、また『ピコン』とメッセージが届く。
『3度目ですよ? 既読も付けず、電話にも出ない。いけませんよ』
ふぅー、何がいけないんでしょうね。吸い終わってから電話するんで、待っててくださいねぇ。
ピコン、ピコン、ピコン。
ん、またメッセージ、
『既読つけないで見てるんでしょ?』
『分かってるんですよ、だって』
『今、あなたの部屋の前に居るんですから』
…………。
…………え?
俺は部屋のドアを見る。
ピコン。
『あーけーてー』
怖い怖い怖い!
いないの絶対分かってるけど、怖いよ、文面が。
プルプルプル。
………切っちゃお!
ピコン、ピコン。
『(`・ω・´)?』
『そろそろ出てもらえますか?』
「あ、はい」
本日5回目の電話に出る。
出た途端、配信中の出来事で2時間、電話を切ったことで30分間説教をされた。
配信後の身体には少し堪えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彼女の説教が終わり、世間話に突入。
「今日、この後水上さんとコラボするんですけど」
「ふーん、そうなんだ」
説教で聞き疲れ、適当な返事をしながら、カタカタと夜配信の準備をする。
夜配信何しようかな? PUBGかレインボーシックスやろうかな。
「ーーで、ーーするんだけど、ーーーしょにやってくれませんか?」
「ああ、はいはい。了解です」
「本当ですか⁉︎ 良かったです!」
何が良かったかな。
「じゃあ、早速なんですけどダウンロードしてもらえますか?」
はいはい、ダウンロー、ド? んんんんんん?
「あ、あの」
「あっ! ダウンロード済みですか? なら、フレンドコード送るので、フレンドになってください」
「あ、まっ」
「やっぱり、こっちからフレンドコード送りますね」
「あ、あの、ちょっと」
やばい。話ちゃんと聞いていない上に適当に返事したせいで、何かダウンロードする羽目になってる。フレンドコード、ってことは、ゲームかアプリか?
いやいや、まだ引き返すことができ、
「まさかね、話半分で聞いていた上に生返事していたとかないですよね? ねぇ、滝くん」
ないですねぇ。引き返すどころか、引き返す道が今断たれましたね。
「も、もちろん、そんなことないですよ」
「ですよね。じゃあ、そんな滝くんのためにもう一度説明しますね」
「………すみません、お願いします」
佐々木さんの説明はこうだ。
今日、佐々木さんは聡太さんとコラボするらしい。ゲームは『エーペックス』というFPS。最近、佐々木さんはこの『エーペックス』にハマっていて、1日中プレイしている時もあるそうだ。
で、この『エーペックス』と言うゲームはランクマッチがあり、3人1組でチームを組むらしい。チームを組むにあたって足りない1人。そこで共通の友達、俺をを召喚すること。
なるほど、なるほど。ってか、FPS苦手ではなかったですか? 好きになったのかな?
「で、俺は『エーペックス』を入れればいいんですね?」
「はい、お願いします」
このゲーム『エーペックス』は、いろんな配信者が配信していて、俺も名前ぐらいは聞いたことがある。やりたいかって言われると、FPS作品沢山やってるので手が回りませんと答える。
だが、今回は佐々木さんと聡太さんのお誘い。俺よりも人気である配信者に誘われて断るなんてことは出来ない。だって、リスナー増やすチャンスだもん!
俺はすぐに『エーペックス』をダウンロードする。
「配信って何時から始めるんですか?」
ダウンロードには少し時間かかる。
「今、17時だから、あと3時間後。20時にコラボ配信する予定。でも、先にちょっと『エーペックス』配信してようかなって思ってるから、私は19時に配信する予定」
「ああ、了解です。20時にコラボ配信。19時に佐々木さんが配信」
「そうそう、19時から来てくれますか?」
19時からか。うんん、夜配信の準備に飯食って、風呂入ってやることやって。
「19時ぴったは無理ですね。早く行けたら行きます」
「分かりました。早く来てくださいね」
「はーい」
お互いやる事があるので、ここら辺で通話を終わりにする。
急にやることになった『エーペックス』に、全くした事がない人の配信の参加。
ちょっと楽しみになってきた。
俺は椅子から立ち上がり、家事をする。
「早めにやって早めに合流するかな」
俺はまずご飯を作りに、キッチンに向かうのであった。
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