狩屋 瑞希

 今日は雲一つ無い晴々とした天気だ。太陽の光が眩しい。


 皆より早くマンションを出て学校に向かう。 バーニ達と一緒に通学すると必然的に注目の的となり、後で嫉妬、妬みの的になってしまう。 あえて、時間をずらして毎日通学するように心がけている。 


「榊君、おはよう」背後から女の子の声が聞こえる。

 あまり馴染みの無い声であったが、振り向くと、そこにはクラスメイトで、狩屋刑事の妹、狩屋 瑞希の姿があった。 いつも俺のことをキモイと言っていた奴だ。


「ああ・・・・・・おはよう」俺は軽く手を上げて挨拶を返した。 また、何か言われそうな気がしたので出来るだけ喋らないようにしようと心に誓った。

「今日は、あのおに綺麗なお姉さん達と一緒じゃないのね」狩屋 瑞希は尚も話しかけてくる。彼女も俺が、バーニ達と知り合いであることを知っているものだ。 バーニ達と直接話す事を躊躇する男子達が、俺に紹介してくれと話しかけてくる事は多いが、女子のそれは初めてあった。


「西高は賑やかになったね。以前は皆、ヤル気の無い学校だったのに」狩屋 瑞希が呟いた。 確かに、バーニ達が転入して来るまでは、平凡だが、あまり活気のある学校とはいえなかった。外部から見るよりも比較的砕けた雰囲気の学校だったがバーニ達が現れてから、その雰囲気が変わった。まあ、だらけていた生徒会を詩織さんが、まとめた事も一員であるが・・・・・・。

「まあ、私も毎日楽しいわ、前には無かった感覚だわ」最近、俺は少し憂鬱なのですが・・・・・。

「お前の兄ちゃんって、・・・・・・・直、ナオミさんと付き合ってんの?」俺は、不覚にも思ったままの言葉を口にしてしまった。

「えっ、そうなの・・・・・、そんな感じしないけど・・・・・・、榊、さては焼きもち焼いてるの?」狩屋 瑞希はグリグリと俺の脇の辺りに肘をねじ込んできた。 痛いのと、なんだか距離が異常に近いのですが・・・・・・。


「やめろよ・・・・・・」俺は、狩屋 瑞希の肘をかわした。

「ふーん、そんな態度にでるんだ・・・・・・」狩屋 瑞希は、少し拗ねたような顔をした。なにがなんだか俺は彼女の態度の意味が解らなかった。


「・・・・・・ 」彼女の顔を見て、不覚にも、こいつ・・・・・・可愛いなと少しだけ、思ってしまった。本当に、少しだけ・・・・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る