第22話 ワンダーな男の子

 玲香「鍋の具材を買いに行くわよ」


 ひさしぶりに鍋パーティーをすることになった。

 玲香ちゃんち近くのスーパーで買い物をすることになったけど。


 未咲「わたし、スーパーってあんまり行かないんだよねー」

 玲香「そう? 毎日いろいろな商品が安くなっててけっこうお買い得よ」

 未咲「ほんとだ、このジュースなんて78円だよ! コンビニより安い!」

 玲香「買わないわよ」

 未咲「まだ何も言ってないんですけど……」


 先読みが過ぎる。ちらっとそうしようとは思ったけど。


 未咲「あっ、このお菓子も安い! これも、これも!」

 玲香「はいはい、さっさと行くわよ」

 未咲「あーん、待ってよれいかちゃ~ん!

    あっそうだ玲香ちゃん、すじのとおった――」

 玲香「買わないって言ってるでしょ、お弁当でもないのに」


 いつものわたしたちだった。 (※豆)ふきは漢字で「苳」などとも書く。


 ♦


 未咲「あれ、いつの間にわたし、こんなところに……?」


 ところかわって、ここはどこだろう。

 遊園地のようでいて、まわりを見渡してみるとちょっと違っていて。


 未咲「いろんな国の国旗がある……なんの催しだろう?」


 少なくとも、直近でそんなイベントを聞いたことがない。

 さながら別の世界に来たかのようだ。


 ??「やあ、ようこそエキスポへ!」

 未咲「えっと……君は誰?」


 みたところ少年っぽい。そしてどこかひと昔前の感じが漂っている。


 ??「ぼく? んーそうだなぁ……」


 ひとつ息をついて、こう言い放った。


 太陽「太陽だよ」

 未咲「たいよう君っていうの?」

 太陽「そ、太陽」


 なんだかとっさに考えたみたいな感じもしたけど、とりあえず受け入れよう。


 太陽「あのさ、これからぼくのいうことを復唱してくれる?」

 未咲「えっ? うん……」

 太陽「『あしたぴかぴか、あさってきらきら』。はい、言って」

 未咲「あしたぴかぴか、あさってきらきら……えっと、これは何?」

 太陽「さぁ、それがぼくにもよくわかんないんだよ」

 未咲「なんで言わせたのかな……」


 言って、その子は風のように消えていった。


 未咲「ヘンな子だったなぁ……まいっか、ついでにいろんなところまわってこ」


 そのときだった。

 強い光が差して、一気にまた別の世界――もとい現実世界に引き戻された。


 未咲「いままでのは全部、夢……?」


 そうみたいだった。

 わたしは玲香ちゃんちのこたつに横になっていて、玲香ちゃんも寝ていた。


 未咲「そうだ、いまのうちにいたずらしちゃお……」


 玲香ちゃんの顔に、てきとうに太陽の絵を書いておいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る