第9話 駅前バンドガール

 未咲「あっ、玲香ちゃんだ。おーい!」

 玲香「(どこかで聞いたような声がしたけど、気のせいね……)」


 ギターを後ろに背負う少女。

 その姿を見ただけで、それが誰だかなんてひと目でわかってしまう。


 玲香「未咲、わたしもそれほど暇じゃないの。あとにしてくれるかしら?」

 未咲「そんなこといって~、ここで誰かと待ち合わせしてるんでしょ~?」

 玲香「それはそうだけど……気が散るから、いまはあまり話しかけないで」


 静かに音楽を聴く玲香ちゃん。ちょっと聞きたくなって、様子をうかがう。


 玲香「あんたがこれからなにをしようとしているか、うっすらわかったわ」

 未咲「あっさりバレた……」


 別の話題にしよう。


 未咲「そのギター高そうだね。いくらくらいしたの?」

 玲香「それなりにしたわ……って、そんなこと聞いてもどうせやらないでしょ」

 未咲「そうだけど、ちょっと気になっただけ」


 この会話、なんだかもうちょっとだけ続きそうな予感をなんとなく察した。


 未咲「なんていうんだっけ、このギター……名前わすれたけど、かっこいいよね」


 いや、絶対知らないでしょ。


 玲香「……駅近くのライブハウスで演奏させてくれることになって」

 未咲「そうなんだ~。わたしも聞きに行っていいかな?」

 玲香「残念だけど、もうお客さん埋まっちゃったから」

 未咲「しょぼーん……」


 あからさまに落ち込む未咲。昔の顔文字みたいになっててちょっと可愛かった。


 玲香「ふふっ( ´艸`)」

 未咲「なんで笑ってるの、玲香ちゃん……?」


 ヘンな目で見てくる未咲をあとにして、わたしは会場に足を進めるのだった。


 ♦


 ライブ演奏を終え、駅に向かおうとすると。


 未咲「玲香ちゃーん、おつかれさま~」

 玲香「あんた、ずっとそこにいたの?!」


 聞くこともないのに会場前で待ってたと思うと、たとえ幼馴染でもおぞましい。

 わたしはついそう考えてしまった。

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