第3話 電車で人違い
玲香「へぇ、そんなことがあったのね……」
聞いてみれば、未咲はやっぱり未咲だった。
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未咲「あっ、玲香ちゃんだ! おーい!」
電車通学に切り替えてすぐだった未咲。
無理もないと言いたいところだけど、間違う相手がよりによって幼馴染。
??「(えっ……誰、この子……)」
じとりとした目を向けてしまうわたし。名前は
歩「(一音もあってないんだけど……みょうになれなれしいし……)」
にこやかな笑みを絶えずこちらに見せてくる。いや、というかほんとうに誰。
歩「(訂正してあげたいけど……とりあえず様子見してみよう……)」
下手に真っ向から否定してしまうと、相手がどう出るかわからない。
大恥をかかせることにもなりかねない。どこかで気づいてくれるのを待とう。
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それからあれこれ適当に話をかわすも、一向に気づく気配がない。
歩「(どこで判断したんだろう……もしかして、この長い髪とか……?)」
女の勘で、なんとなく彼女にはそういう友達がいそうだと感じ取れた。
歩「(きっとそれで勘違いしたのね……うふふ、かわいい……)」
いとしささえ見つけだすまでに、わたしの中ではこの子に親しみを感じていた。
歩「(しかしこのお嬢さん、ずっと表情崩さずにぱにぱして話すなぁ……)」
疲れたりしないのだろうか。わたしだったら途中でだれてしまうかもしれない。
歩「あの……」
未咲「あっ、もう駅に着くね。玲香ちゃんも降りるでしょ?」
歩「えっと、失礼ですけど……人違い、されてませんか?」
未咲「……ん?」
このひとことで、彼女の表情がいっきに凍り付くのを感じた。
どこかで気付いてくれると思ったんだけど、まさか目的駅を過ぎてもとは。
さすがに言わないとまずいと感じて、単刀直入に言ってしまった。
歩「わたし、乗り過ごしちゃったんですけど……」
未咲「失礼しましたぁっ!」
顔から火が出るとはまさにこのこと。わたしは全力で詫びてひとり駅を降りた。
歩「お話がたのしくて、つい降りるの忘れちゃった……」
♦
玲香「声とか、どこかで気づく要素あったでしょうに」
未咲「ほんとうにそうだよね……ぱっと見で思い込むのってよくないよね……」
心の中で、玲香ちゃんにも全力で詫びた。
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