文章
竹原
キャンパス
このキャンパスには、リスザルがいる。
狩野英孝と渡辺謙を足して2で割った経済力を持つそいつは、今ではこのキャンパスのアイドル的な存在になっている。
僕は、大野池のすぐそばにあるベンチに座ってそのリスザルをぼんやりと眺めながらブタメンにまぶされている粉を全て舐めとることを至上の喜びとしている露出狂だ。
同じ学部の山中さんは、研究室の教授のセフレで、助教と二股をかけている。彼女は最近大学を中退し、ブルドーザーの一部となったらしい。
ブルドーザーと言えば、牛蒡(ごぼう)という漢字は明治時代に牛鍋が普及した際、たまたま鍋に入れたら美味かったことに由来する。ゆえに、牛に旁――「寄り添う」という意味の「つくり」――にくさかんむりで「牛蒡」である。ちなみに牛蒡が日本で食べられ始めたのは江戸時代から明治時代であり、日本で最初に牛蒡を食べたのはホルスタイン・モリ夫であるという記録が残っている。これは実は真っ赤な嘘だ。
僕は手に持ったリボンナポリンをリスザルに叩きつけたが、そのリスザルは身長が7メートル、握力が2万kg、趣味がお裁縫だったため、即座に僕のキンタマを握り潰し、彼は――彼女かもしれない――山崎まさよしの「セロリ」を口ずさみながらすすきのの街に消えていった。
次の日。僕は松屋でバイトを始めた。
初めは慣れない業務に四苦八苦していたが、27秒もすると仕事の要領を掴み始め、僕はチーフ候補とまで言われるようになった。と思ったがしかし、それは僕の幻聴であり、僕が誤って丼にいくらのみそ漬け――この地域の特産品である――を乗せた瞬間、ブルドーザーが店舗を粉みじんに破壊した。
そのブルドーザーは山中さんだった。相変わらず、彼女は綺麗だった。
僕は山中さんに軽く会釈をした。山中さんも、それに合わせて会釈を返してくれた。
すると、見る見るうちに僕の肘からショベルカーが生えてくるではないか。
その様子を見て、僕は「気持ち悪っ」と呟いた。山中さんも「気持ち悪っ」と呟いた。
始めて人と心が通じ合った。そう思った。
また次の日。僕は松屋のバイトを辞めた。露出狂であることがバレたからだ。
僕の後にはリスザルとクラゲが入ってきたらしい。
結局最後まで、あのリスザルが僕の息子であることを彼女に明かすことが出来なかった。だから僕は露出狂を辞めた。
僕の手元には、もう何も残っていなかった。
だけどそれでいいんだ、と思った。
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