第21話 ピーナのプライド

 賀茂課長お元気でしょうか。

 今回は,フィリピーナのプライドの高さについてご報告します。

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 フィリピーナはプライドが高いとよく言われます。そのプライドとは何であり,そのプライドの高さはどこから生じるのでしょうか。ボーイフレンドと別れると,自分に非があるとしても,それを自ら認めることはなく,口頭はもとよりフェイスブックで元カレの悪口をこれでもかと発信しまくります。それはフレンズに慰めてもらいたいという気持ちの表れでもあるでしょうが,度を超しています。

 フィリピーナは,自分の非を指摘されても謝ることはありません。言い訳するか他人のせいにします。これは中国人でも同じですが,フィリピーナは,人前で叱責されると,大声で怒り出すか,そうでなくても決して忘れることなく,いつまでも根に持って将来爆発します。

 待ち合わせ時間に遅れても,トラフィック(Traffic)だとかレイニー(Rainy)だとか,お決まりの言い訳をするだけで,ソーリー(ごめんなさい)と謝ることはありません。待ち合わせの時間が過ぎたので,「今どこ?」と電話やメールををすると,今ベッドから起きたばかりなのに,「今向かっている。」(I'm on my way.)と答えます。待ち合わせ時間は出発時間なのです。唯一フィリピーナが時間に遅れないことがあります。それは給料日などマネーを支給されるときです。

 どうもフィリピーナはプライド(日本語で言えば矜恃)という英単語は知っているものの,その意味が理解できていないように思われます。

 私の拙い研究によると,タガログ語には英語のプライド(pride)とか日本語の矜持きょうじという概念に相当する言葉がありません。プライドないし矜恃とは「自信と誇り」という意味ですが,フィリピンスタイルがフィリピンの歴史とカトリックに基づいているのと同様,貧困家庭に育ったフィリピーナが「自信と誇り」を持つことは難しいのかも知れません。失敗を認めて謝罪することとプライドは本来無関係なのですが,自分の失敗を指摘されても言い訳するか他人のせいにするのは,失敗を認めることが「プライド」に反すると感じるのでしょう。しかし,その実態は,自分の非を認めないことによって恥を回避したいという自己中の発想です。

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 日本のオヤジにヘルプを要求する行為はどうでしょうか。

 ヘルプにも数パターンがあります。

 まず,「オカーサン/ビョーキ」「オトーサン/シャッキン」→「ワタシ/カワイソー」→「プリーズ/ヘルプ/ミー」というパターンです。

 それが嘘なら単なる詐欺ですが,本当だったとしたらどうでしょうか(本当か嘘かを見分けるには熟練の技を要します。)。

 そのフィリピーナがオヤジのお気に入りではあるが,

① まだ交際も始まっていない段階(口説き中の段階)

② 交際中だが肉体関係がない段階

③ 肉体関係はあるが,結婚する予定はない段階

④ 肉体関係もあり,結婚する予定の段階(それも日本で暮らすかフィリピンで暮らすかに分かれます。)

⑤ 結婚後

 など様々なパターンが想定されます。

 まず,最も多いと思われる①②③の段階(結婚を前提としない場合)であると仮定しましょう。

 フィリピーナのヘルプは,「同情するならカネをくれ。」と言っているようなものです。日本女性であれば言いたくても言わない(言えない)でしょう。恥の文化と言われる日本文化では,見返りのないカネを要求する行為はプライドに反するからです。

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 それではなぜフィリピーナは平気でヘルプを要求できるのでしょうか。

 まず言葉です。「ヘルプ」の中身は,「ギブ・ミー・マネー」(Give me money.)なのですが,それでは露骨すぎるので,KTV歴アマチュアのフィリピーナは,「ヘルプ」という単語で誤魔化そうとするのです。セミプロになると,「サポート」(support)という「ヘルプ」よりも婉曲な言葉を使います。さらにプロフェッショナルになると,「フェイバー」(好意,親切)という単語を使います。例えば,「Can I ask you a favor?」などです。

 フィリピンの貧困層には遠慮という概念がありません。遠慮などしていたら飢え死にするからです。フィリピンスタイルは図々しさが前提となっています。

 ヘルプの背後には,「持てる者は持たざる者に施せよ」というカトリックの教えがあるようにも思えます。が,それは違います。「富者は貧者に施せよ」というカトリックの教え(ルカ福音書)は,ゴッドが富者に命じる言葉であって,貧者が富者に要求するための言葉ではありません。それをするなら,イスラム原理主義と同じで,教えの局解です。

 フィリピーナがファミリーのためにヘルプを要求しても,フィリピーナの高いプライドに反しないのは,「愛するファミリーのためにヘルプを要求しているにすぎず,自分のためにカネを要求しているのではない。」と言い訳をしたいからです。ブランドバッグを買ってくれと要求しているわけではないと言いたいのです。

 聖書には,「汝,隣人を愛せよ」という一節があります。フィリピーナは,オヤジに対し,「私を愛するなら,オヤジ,ファミリーを愛せよ。」と命じているのです。 フィリピーナはファミリーと一体であり,ファミリー・ファーストなので,「私が愛するファミリーが困っているのに,あるいは,私が愛するファミリーがハウスを望んでいるのにヘルプしてくれないということは,私を愛していないのと同じだ。」というわけです。オヤジのフィリピーナに対するラブの大きさはヘルプの量すなわちマネーサプライによって測られます。

 ④ 肉体関係もあり,結婚する予定の段階ではどうでしょうか。フィリピンで暮らす場合は,ファミリーといっしょに暮らすハウスを建ててほしいとか,少なくともリノベーションしてほしいと要求されます。本国のファミリーのためにハウスを買ってほしいという要求は,結婚生活を日本で送る予定の場合でもされることがあります。

 フィリピンで買ってほしいとねだるハウスとは,土地付きの一戸建てで,コンドミニアム(マンション)ではありません。コンドミニアムは日本人名義にできますが,土地はフィリピーナ名義としてフィリピーナの所有物とするしかないからです。したがって,カネ目当てのフィリピーナはコンドミニアムを買うことに反対するでしょう。

 もしオヤジが一戸建てのハウスをおねだりされたら,土地をフィリピーナ名義にするのは仕方ないとしても,頭金を半分払って後は10年ローンとか20年ローンにし,オヤジ名義のハウスについては,フィリピーナとの間で,オヤジを借主,フィリピーナを貸主として,土地の賃貸借契約をしたうえで,土地についての毎月のローン返済額を賃料として支払うべきです。そうすればもしフィリピーナと別れても,家賃を支払う限りはそのハウスに住むことができるし,家賃を支払いたくなければどこかに引っ越せばいいだけです。家賃を払わなければ住宅ローンも払えないわけです。ハウスをまるまるフィリピーナに奪取されることはないのです。もしそうするなら弁護士に依頼しなければなりません。ただし,フィリピンではローンの金利は高いことが欠点です。それを避けようとするなら,ローンの貸主として信頼できる知人の日本人名義(A)を借り,裏でAに全額を払って土地所有者に土地代金の全額を支払ってもらい,フィリピーナに対しては,全額のローンを組んだことにして,栃に担保を設定しておくという方法が考えられます。

 これは,「別れるときにはハウスなんかくれてやる。」という太っ腹なオヤジには無用のアドバイスです。

⑤ 結婚後には,日本で生活しようと,フィリピンで生活しようと,ファミリーに対する送金は,オヤジが死ぬまで続きます。オヤジの送金に対して,フィリピーナが感謝することはありません。感謝するとすれば,それはゴッドに対してであり,オヤジに対してではありません。

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