各地巡の怪異談
エビ天シャケ太郎
第1話 ぷろろおぐ
各地巡はプロである。
それは医者だったりイラストレーターだったり、小説家などなど、その道を極めた者はみんなプロ。
じゃあ巡さんは何のプロかって?
それは、かなり世間離れした、変わったものの、だ。
魑魅魍魎、悪鬼羅刹をぶった斬る解明師。
未確認の怪異を解析し解明する専門家である。
ある時は噂話集めに没頭し、またある時は悪さを働く妖怪や悪人を退治する正義のヒーロー。
しかしその実ただの趣味でやっているだけなのだ。
かく言う私、多々良コダマも訳あって彼女の趣味に付き合っている。
毎度毎度とよく面倒事を押し付けてくる人だ。
この間なんかもツチノコ探しで富士の樹海に行った時に二人仲良く遭難した時にはぶっとばしてやろうかなとは思ったけど(勝てない勝負はしないので心に止めておくだけだ)
たまたまそこに巡さんの知り合いが居たからツチノコも見つけることが出来たし帰ることも出来たんだけれど。
まったく……。
遭難するリスクをそもそも考えてないほどに能天気なところは勘弁していただきたい所存である。
しかしまあ、事前にこうなるだろうなとは薄々思ってはいたし、こんな危ない事は当然断りたいところだったのだが巡さんには返しても返しきれない程の恩があるためないがしろには出来ない気持ちが強いので断ることはしていない。
というかそれをダシに使われて強引に連れてかれた。
覚えとけよ。
まあ私も、嫌だ嫌だと言っていても巡さんは嫌いじゃないし力になりたいと思っているからこそ成立する関係である。
なんて誰に向けて説明してるのか分からない事をつらつらと言っていたらこんな時間だ。
現在朝の四時。
少し肌寒い……。
いつもより少し早めに目覚めていた事もあってスムーズに支度が出来た。
私は毎日の日課で、その日の朝刊を届けに巡さんの住んでいる廃ビル群の街へとジョギングがてら通っているのだ。
新聞くらい自分で契約しろよとは誰しもが思っているところだろうけど巡さんは廃ビル群に住んでいるので無理ってものだ、住所不定無職なんだもん。あの人。
おおよそ3kmほどの片道、最初は死ぬほどキツかったけど次第に慣れていって、今では体力作りに一つ買っている。
怪異探索に赴く時には全力で逃げないと死ぬ場面が多くあるので体力はあればあるほどよいのだ。
空が綺麗だなあとか、まだ寒いなあとか、そんな事を考えながら黙々と走っていたら数十分経過、そろそろ目的地に到着しそうである。
廃墟街の近くになればなるほど人がどんどん減っていくのは面白いもので、近くにコンビニは一つしか存在しない。
朝方はよくたむろしているガラの悪い人たちをよく見る。
最近は心霊スポットなんて言われて廃墟探索に来る人が多い、しかし廃墟と言っても人が住んでいる廃墟だ。
コンビニでたむろしている人よりガラもタチも悪い変人奇人達が……。
さてさて、今日も面倒事がないように祈りつつ、元気にがんばろう!
「おはようコダマちゃん!今日はバケモンハンターやるぞ!!ひと狩りいこうぜ!!!」
笑顔でこちらにグッジョブしてくるその顔は朝日に照らされ、とても輝いて見えた。
しかし私は顔面蒼白である。
今日はがんばれそうにない。
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