贅沢な猫

 家に帰るとお風呂場の方が何やらやたらと騒がしい。


「ちょっ、ちょっと、モグやめなさい!」お母さんの声。


「や、やめて、ああ!モグったら……、もう」何やら尋常でない様子であった。


「お母さん!どうしたの!?」不安になり脱衣場に飛び込む。


「あっ、雄太。お帰りなさい。モグが頭からミルクを被ったの。洗ってあげようと思ったんだけど、ペット用のシャンプー嫌がるのよ!私のシャンプー高いのに!」少し扉を開けてお母さんが愚痴ぐちる。


 にゃ~


 モグは気持ち良さそうに湯船に浮いている。



「お湯入れてるからついで雄太もお風呂にはいったらどう?私はすぐに上がるから」お母さんはドアを閉めた。体にかけ湯する音が響く。


「なんだ、驚かさないでよ」僕は安堵の溜め息をついた。ちなみにモグはおす猫である。


 お母さんと入れ替わりにお風呂に入る。モグはそのまま気持ち良さそうに湯船に浸かってる。足は下に届かないようだが、器用に体を浮かせているようだ。動物はこういうのを嫌がると勝手に思っていたのだが、モグは平気なようであった。


 体を洗い僕もお湯に体を浸した。モグの体からいい匂いがする。


「ああ、お母さんと同じ匂いだ……」モグもこの香りが気に入ったようで、これ以降もペット用シャンプーを使おうとすると、牙を剥いて怒るようになった。


「もう、贅沢な猫ね」お母さんは呆れていた。


 最近は、元気になりミルク以外の固形物もよく食べるようになってきた。お母さんはモグの分のご飯も用意して、もう一人子供が増えたみたいって、笑いながら言っていた。


 一匹で何処へやら出掛けて行くことが多くなったが、夕方前とかになるとキチンと家に帰ってくる。どうやら自分の家と認識したようだ。


 いつの間にか、モグは完全な家族の一員となっていた。

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