黒猫のモグ
「さあ、雄太!家についたわよ」お母さんはタクシーの扉が開くと清算をすませて降りた。その後を僕もゆっくりと着いていく。
約2週間ぶり位の家。僕の荷物の入ったスポーツパックを肩に担いでお母さんが歩いていく。
家の前に差し掛かった時、急にお母さんが悲鳴をあげる。「きゃー、な、なにこれ?」家の門柱を開いたところに黒い物体が転がっている。
「仔猫かな」僕は恐る恐る近づいてみる。
「帰宅早々、玄関に黒猫の死体が転がってるってなんだか不吉ね」
僕はそっと仔猫の様子を確認する。
「ちょっと、雄太。駄目よ、死んでる猫を触ったらバイ菌がいっぱいよ」お母さんは汚いゴミでも見るような目をしている。
「お母さん!この
「駄目よ、貴方は喘息なのよ。そんな猫買えないわよ!あとで捨てるから置いときなさい!」お母さんは鍵を玄関の扉に差して解錠した。
「でも、このままじゃ、死んじゃうよ……」僕の胸の奥から悲しい気持ちが込み上げてきて、涙が溢れでそうになる。
「もう、せっかく退院できたのに……、その猫が元気になるまでだけよ。それからあなたの喘息が酷くなったら捨てるからね!それでもいい?」お母さんは呆れた顔で承諾してくれた。
「ありがとう、お母さん!」僕はゆっくりと仔猫を抱き上げると玄関の中に飛び込んだ。
「この箱が丁度よさそうね。それとミルクがいいかな」お母さんは紙で出来た四角い箱にタオルを敷いて用意し、そして皿にミルクを入れて持ってきてくれた。
しかし、仔猫は興味は示したが自力でミルクの所に行くことは出来ないようすであった。
「うーん、仕方ないわね。ちょっと待っててね」お母さんは二階の階段を登っていった。
「元気になれよ~、元気になれよ~」僕は仔猫の背中を優しく擦ってあげた。少し目を半開きにして僕の顔を見ている。
「雄太、これならミルクを飲めるんじゃない?」お母さんはいいなが僕が赤ちゃんの時に使っていた
仔猫は小さな舌を出して哺乳瓶のゴムの部分を舐めた。中から少量のミルクが出てくるようでそれを美味しそうに何度も繰り返した。
「お母さん、すごい!」
「えへん!」お母さんは少し自慢げに胸を張った。そういえば前にお婆ちゃんに聞いた話だが、お母さんが小学生位の時、よく捨て猫や犬を拾ってきたそうだ。あまりの数を拾ってくるので、その都度お爺ちゃんはお母さんが夜寝てから捨てに行っていたそうだ。
その度にお母さんはワンワン泣いて大変だったと言っていた。
最初は仔猫を捨てるような事を言ってはいたが根っからの動物好きなのだなと思った。
「この仔猫、なんかモグラみたいね」ミルクをやりながらお母さんは笑っている。
「モグラ?」正直いうとモグラなど未だにかつて見たことなどなかった。
「そうだ、この
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