59 さらばオクタグラム

学園長であり、大魔術師のマルエ=ド=マーリー最後の大魔法によって魔王軍によって襲撃されたオクタグラムは完全に修復した。死んでいった人々も、壊れた建物も。マルエ=ド=マーリーという、偉大な魔術師の死を代償として。


魔王軍の襲撃の知らせを受けて、タルタロッサ帝国から騎士たちが派遣されてきた。

その大勢の兵とともに、マルエ=ド=マーリーの葬儀が行われた。

マルエの遺体はオクタグラムの頂上に祀られた。

「大魔術師マルエ=ド=マーリーに敬礼!!!!」

都市に住む人々、オクタグラムの生徒、そしてマルエによって救われた教師たち。

静かなる60秒であった。




「あなた方が、魔族の侵攻軍を撃退したのですね。この度は誠にありがとうございます。」

騎士の長であるルルドという名の男が俺たち四人に頭を下げる。

イミナ、リヴァイアサン、ロイ、フェイの四人である。

「彼の海龍帝王様、そして白の悪魔様。お二方には感謝しかありません。つきましては、我が帝国にご招待させて頂きたいと思っております。相応の御礼をご用意しております。」

「い、いえ!私なんて大したことをしていません!ほとんど…トゥルガーさんのおかげです。」

イミナは相変わらず謙虚である。俺と違って。

俺はその時、その御礼とやらのことを考えていた。彼の強国タルタロッサ帝国の御礼とは一体、どんなものなんだろうか…。

「お、おれい…。ごくり…。」

「ちょっとリミドさん、下品ですよ。でも…せっかくご招待していただけるのであればタルタロッサ帝国に行きましょうか」

「待て。我は反対なのだ。」

リヴァイアサンが珍しくイミナの意見に反対した。

「…トゥルガーさんどうしてですか?」

イミナはそのわけを聞く。

「さっさと東の大陸へ行って、イミナの魔法不可の呪いを解くのが先なのだ。のんびり帝国に訪れるのは時間の無駄なのだ。」

「いえ、私もそこまで急いで…というわけではありません。冒険者としての活動もしばらくしていませんでしたし…タルタロッサ帝国にはギルドもありますよね。」

「ははは、白の悪魔様は面白いことをおっしゃる。タルタロッサ帝国こそ西の大陸にあるギルドの本拠点がある場所です。」

「あ、そうだったんですか!」

「冒険者としての活動がしたいのならば、タルタロッサほど優れた場所はございません。」

「…むぅ!それでも嫌なのだ!」

リヴァイアサンはむすっとした表情で腕を組み、頑なにタルタロッサに向かうことを反対する。俺はまぁ…イミナが行きたいというのならば否定する理由なぞ存在しない。

「…あの、トゥルガーさん?どうしてそこまでかたくなに?」

「ごほん。」

ルルドが咳払いして、イミナの耳元に近づく。

「帝国には炎龍帝王様がいらっしゃいます。海龍帝王様と炎龍帝王様は大変仲が悪いとお聞きします。おそらくそれが原因かと…。」

あぁ…なるほどね。

「おいおぬしら。聞こえておるぞ?」


「そうだ!そうなのだ!我はあやつと会いたくはない!」

「むぅ…それは困りましたな。そういえばフェイ様。」

「…ん?なんだ急に話を振るな。」

「お父上が、一度帝国に戻って来いとの伝言を承っております。おそらく、安否を確認する意味でしょう。」

「お父様がか…。本当にあの人は俺に甘い…。わかった。俺もイミナと一緒に行こう。」

「あららー。私1人ぼっちか。」

ロイが珍しくしょんぼりとした顔をする。

「ロイ様にも招待が来ております。魔族撃退に貢献した方です、手厚くお迎えせよと。」

「えぇうそ!まじ!イミナちゃん一緒に行こうよ!」

「えーっと…でも、トゥルガーさんが…。」

「我は絶対に行かぬ!絶対なのだ!」

リヴァイアサンは駄々をこねている。

「どうしても行きたいというのなら勝手に行け!我は絶対にあやつと関わりたくない!」

「と…言っていますが?」

「それならば仕方ありません。トゥルガーさんとはしばしばのお別れです。ロイさん、フェイさん、一緒にタルタロッサに向かいましょう。」

「それではいろいろとご説明がございますのでこちらへ…。」

そういうと俺たちはリヴァイアサンを残して葬儀場を後にした。



「待つのだああぁぁぁ!!!我を1人にするでないイミナああぁぁぁ!!!」



結局、リヴァイアサンはイミナについてきた。

俺たち四人は西の大陸でもっとも強いと呼ばれている国、タルタロッサ帝国へと出発したのであった。


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第三章完結。

まぁ一応、60話も存在しますんで見てください。別パートです。

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