33 海龍帝王種4
「おいおい一体どうなってやがる!?」
「わ、私が用を足している間に何があったんですか!?」
手洗いから戻った俺らが目にしているのは、砂浜で大暴れしているリヴァイアサン(龍化状態)であった。
「あはは、気分が良い!気分がよいぞおおぉ!ひっく。我をたのしませろおぉ!幼子を用意するのだああぁ!ひっく。」
「イミナ飛べ!」
とっさに指示を出す。イミナは高く飛び上がり、リヴァイアサンから放たれた尻尾による攻撃をかわす。
「あ、あれ酔ってませんか!?」
「おい待て上位龍は最高レベルの精神耐性を持っているんじゃなかったのか!?」
「そのはずです、シルヴァさんと同じで「酒に酔いたい」とか言ってましたもん!」
「でもあれどう見ても酔ってるよな!」
あたりかまわずに攻撃している様子のリヴァイアサン。こ、これはいったいどうすればいいのか!
「…んお?イミナではないか!」
リヴァイアサンは飛び上がったイミナを尻尾で素早くつかみ、リヴァイアサンの顔の近くに寄せた。その間わずか0.1秒。くそ、反応できなかった。
「おぉよしよし、かわいいのう。む?お邪魔虫がいるじゃないか出ていけ!『帝王覇気(エンペラードライブ)!!!』」
え?俺は気づいたら砂浜にいたのだ。いな、リヴァイアサンに弾き落された。
お、おい待て。俺がすべて、イミナから分離している。
イミナのガントレット、ブーツ、服、そして心臓までも。
「イミナあああぁぁぁ!!!!」
あ…、や、やばい…。俺も体が動かない…。俺とイミナは一心同体、完全に分離してしまえばお互いの生命活動が終わってしまう。俺は最後の気力を振り絞り、イミナのもとへ戻ろうと体を変形させる。しかし、届かない。イミナの顔からは血の気が引いていく。すでに意識はない。まずいまずい…誰か。
「なぁにやってんだかリヴァイアサン、人間に迷惑かけないでほしいね。おらっ。」
「ふんが!?」
リヴァイさんの頭部を何者かが鋭い斬撃で切り込む。リヴァイアサンの硬い鱗を貫通させることはできないが、どうやらリヴァイアサンには相当なダメージが入ったようだ、尻尾が緩む。イミナがリヴァイアサンから離れ、落下する。俺はすかさず体を移動させてイミナの着地の衝撃をスキルで吸収させる。すかさずイミナの心臓へと戻る。必死に、必死に脈動する。たのむ、イミナ死なないでくれ!
「…はっ、は!わ、私いま、死んでませんでした。」
「…は、はは。よかった。よかった。イミナが生きていてよかった。」
まさか、いきなり命の危機にさらされるとは思ってもいなかった。もっとしっかりとリヴァイアサンのことを監視しておけばよかった。あぁごめんよ、イミナ。今再生のスキルで回復してるから。
「ったく、あの馬鹿海龍は…。なに飲まされたんだが。おい大丈夫かお前。…ん?なんだ魔道具か?いや、にしては生きているような…。悪魔か何かか?」
「た、助けてくれて本当にありがとう。」
「助けたつもりはないがまぁ…結果そうなったな。で、ことは相談なんだが。」
「早く服きてくれね?なんでこの魔道具もどきが引きはがされたら全裸なのかわからないんだが。」
イミナのグーパンチが飛ぶ。
「先ほどはその!すみません!」
「いやいや、レディーとして当然の反応だ。いやまぁ、レディーというには幼すぎるがな。安心してもらいたいのは、俺にそういう趣味はない。俺が興味あるのは大人びたレディーだけだよ。」
リヴァイアサンを一撃で気絶させた男。何やら発言はいろいろと気持ち悪いのだが、こいつはいったい何者なのだろうか。
すると、騒ぎを聞きつけたシルヴァが駆けつけてきた。
「おい新人、あれほどリヴァイアサンを監視しろ…って。」
シルヴァと謎の男の目があう。
「どうしてクソ師匠様がいるんだよ。」
し、師匠!?
「久々じゃないか馬鹿弟子。元気にしてたか。」
「何しにここに戻ってきたんだよ、放浪してたんじゃねぇのかよ。」
「いやぁ、記事を読んでたら面白そうな子がこの街に来てるっていうから寄ってみたんだけど…まさかその面白そうな子がリヴァイアサンに襲われてるとは思わなくてね。俺が救出してあげたんだよ。」
「おいシルヴァ、この男と知り合いなのか?」
「…あぁ。剣聖サイカ=グラン、冒険者の頂点であるSランク冒険者だ。」
「あ、あれ!?我いつの間に寝ていたんじゃ!?なんか人化解けてるし…なんか頭痛いし…。イミナァ、イミナはどこだぁ。」
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