31 海龍帝王種2
「おい、これはいったいどういうことだ。」
シルヴァが俺のことをにらんでくる。
「いやぁ、俺もさっぱり…。」
俺はイミナの方をみる。
「なんで海龍帝王種が街に上がり込んで、しかもこの新人Bランクになついているとはどういうことだっていってんだよ!」
「いや俺に聞かれてもおおぉぉ!!」
さて、現状を説明しよう。今俺らはメナンカートの街の大通りを歩いている。
イミナは青色の髪をした幼女に背後から抱き着かれている。
その青い髪の幼女は、海龍帝王種リヴァイアサンを名乗っていたのだ。まぁ、百歩譲ってリヴァイアサンがこの街にやってきて、魔法かなんかで幼女に変身したというのはまぁ…いやその時点で明らかに異様なのだが。
「おいリヴァイアサン、この街の代表のシルヴァという。現状を説明してはくれないだろうか。」
「おぉよしよしイミナというのか、かわいいのぉ…。」
「…。」
おっと、無視されてシルヴァがきれてる。
「あのぉ…リヴァイアサンさん?」
「それだと呼びづらいだろう、トゥルガーと呼べ。特別だぞ。」
「じゃあトゥルガーさん、あのぉ…シルヴァさんがお聞きしていますが?」
「あぁん?なんじゃ小童。」
リヴァイアサンが不機嫌そうな顔でシルヴァをにらむ。
「この現状を説明していただきたい、なぜ海龍帝王種のあなたがこの街にやってきて、さらにそのような姿をしているのか。」
「お願いしますトゥルガーさん。」
「んもう、イミナが知りたいなら。いやなに、この国に来たのは別に暇だっただけじゃ。久々の人間の街、何かうまいものでも食って帰ろうと思ったのだよ。人の街にはいるんだったら、人の姿の方がよかろう?これは上位龍のみが使える上位スキルなのだよ。すごいだろ?」
「それでなぜイミナになつくのですか。」
「そんなもんかわいいからに決まっとるだろ。我は幼子が大好きなのだよ、うーむよしよしかわいいのう。だから我もこんな姿をしているのだよ。」
「えっとロリコン?」
俺がぼそっとつぶやく。
「あぁんなんじゃ貴様!?我をロリコンといったか!?…ん、貴様…魔力回路が、というより生命回路がイミナとつながっておるのう、貴様オリジナル種族、それもリミッドか。」
イミナと俺は驚いた。俺の種族を知っている。
「リミッドパーツという種族を見るのは初めてだが、それと似たような種族を見たことはあるぞ。」
「あ、あのトゥルガーさん詳しく教えてください!」
大勢の冒険者に見つめられながら、俺らとシルヴァはトゥルガー=リヴァイアサンと飯を食っていた。
「うむ、美味じゃな。やはり人間は食への探求がすさまじいな。」
「あ、あのそれでリミドさんの…あいや。」
先ほどの話をしようとしたが、この話を大勢に聞かれると困る。おれは悪魔、という風に知れ渡っているから俺が悪魔ではないということが知れるうえに、俺がイミナの心臓替わりであるということがばれるのはそこまでよろしくないのだ。
「おい、お前ら。ここは俺がいるから安心して外に出ろ。」
シルヴァが、イミナが話しづらそうなのに気づき、俺らを見ている冒険者を外に追いやり、店を締め切った。
「よし、これで話せるだろう。この悪魔の種族についてだったか?どういうことだ。こいつは特殊個体の悪魔だと聞いていたが…。」
「悪魔?こいつが?そんなわけないだろ。」
リヴァイアサンが俺のことをフォークでつつく。
「すみません、リミドさんの素性を隠すために嘘をついていたんです。」
「まぁリミッドパーツなんて希少な種族、そう嘘をついたほうが生きやすいだろうな。今は従魔という風になっているんだっけのう。」
「おい悪魔、お前が悪魔じゃないとして俺らに何か危害はあるか。」
「いや…種族名を偽ってきただけで、他に隠していることはそこまでない。」
俺はシルヴァに正直に話す。まぁ、さすがに転生のことについては話せないけれども…。
「そうか、じゃあ別にいい。お前が悪魔じゃないってことはギルドには言わないでおく。」
「ありがとうございます、シルヴァさん。」
「ありがとう、シルヴァ。」
俺らは二人でシルヴァに感謝する。黙っていくれるのはとてもありがたい。
「で?こいつが悪魔じゃないってんならいったいなんだ。」
「こいつは魔流性生命体。主にリミッドと総称されるものでな。生命体の補助をするという、半分機械みたいなものなのだよ。こいつはそのオリジナル形態、魔力を自分の中で循環させ、生命体の核、人間でいう心臓に置き換わっているのだよ。それがこいつの種族リミッドパーツ。」
「ほかに、リミドさんみたいなリミッドがいるってことですか?」
「いや、こいつのように意識を持ったり生命体の臓器の一部になるケースはみたことがない。せいぜい、義手や義足といった扱いをしていたのう。見たのは数百年前だったかのう、もう覚えておらん。うむ、これもうまいのう。それで、どうしてイミナの心臓はリミドに置き換わってるのだ。」
「それは…。」
「リミドさん、お話してもいいと思います。シルヴァさんも、トゥルガーさんも。たぶん、信用してもいいかと。」
俺たちは、今まで隠していた俺の秘密を二人に打ち明けた。
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