2 転生に失敗した男

とある男の視点


「はぁ…ちょっとよくわからないんですけど。」

「ですから、あなたの体が崩壊してしまったのですよ!」

真っ白な空間に美しい女神とふわふわと浮いている光が存在していた。

その光が女神と会話しているようだ。

「あなたは不幸にも事故によってその尊い人生の幕を閉じました。しかしさらに不幸なのはその先です。通常は魂の器というものがとどまり無事この世界に転生することができます。いわゆる才能と呼ばれるものがその類です。しかし、あなたの器は崩壊してしまったのです。そこで新たな器を作らないといけないのですが、この世界では私どもの事情により新たに器を作ることができません!そこで別の世界で人間としてではなく別の器、別の種族、別の才能、別の人生を歩んでもらいたいと思います!」

「はぁ…なるほど、いわゆる転生ですね?」

「はい、はい!理解できてもらえてうれしいです!」

「しかし…あれはなんです?」

光はとあるものに注目する。それは…ガチャガチャ。

「はい!公平性に欠けるため本人、あるいは転生主である女神がその器を決めることは許されないんですよ!」

「そこで、ガチャガチャと?」

「はい!でも安心してください、このご時世大体なんでもチートです!」

わお、ぶっちゃけた。この女神。

「勇者が50%、賢者が26%、創造者が14%、魔物が5%、神が3%です。」

「えっと…計算があわないのですが?残り2%は?」

「シークレットレアです。」

「…はぁ。」

俺はガチャガチャへと向かう。

なんだか子供だましな感じもするんだよなぁ。

「今だけ大サービス!勇者増量中!」

って…ねぇ?なんか。

まぁ、いいんだけどさ。

めんどくさい感じがしながらも俺はガチャをまわそうとする。

まわす―って念じたら勝手に回った。

ガチャン

黒いカプセルが落ちてきた。

妖怪〇ォッチじゃああたりの部類の黒色だ。これは神様とかに転生するのかも?と期待していた俺が阿保だった。

「あー…おめでとうございます…シークレットレアです…。」

「お!なんですか!」

「器なしでの転生です。」

…は?え、いまなんて?

「ですから器ナシでの転生です。」

「どういうことっすか?」

「言ったとおりです。器ナシで異世界にぽいってされます。」

「え何それ不憫!」

器がなくなってしまったから異世界に転生できる。

しかし、その結果は器なし。

「え、じゃあどうなるんですか!俺!」

「そうですね、生命体に寄生するとかして新たな器を見つけないとすぐに消滅します。」

「消滅するんですか。」

「魂ごと。」

うわああああああ。なんて理不尽なんだあああああ!!!

ひどいひどすぎるよおおおおお!!

「で、でも!器が見つかればいいんですよね!」

「はい!でも器が見つかるまでに攻撃されたり、あるいは…5分ぐらい時間がたてばゲームオーバーです。」

なんですかその鬼畜ゲーム。

「それに…転生する場所は選ばれません。せめてもの慈悲で落下耐性だけは付与します。空中に転生して落下して終了なんて悲しすぎますからね。」

「は、ははは…俺の人生…終わった…。」

俺は半ばあきらめかけていた。ガチャでは2%という地獄を引いた。

前世では不幸にも事故った。

あぁ…もう…。




















やっぱそうなるよねえええええええええ!!!!

神様の心配通り、俺は空中にほっぽり出された。

もしも俺の下が街とかなら人がいると思うからいいのだ。

人間を器としたいというのが本音だ。

魔物とかは嫌だ。なんか気持ち悪い。

しかし、俺の下に見えるのはおおおおおおおおおおきな森。

見渡す限り森である。

そして悲報だ。

思ったよりも高い位置に転移した。

いまやっと雲を通過した。自分で時間を数えていたが、残り時間はもう3分だ。

地面につくまではどうしようもできない。夜というのもあって空を飛んでいる生物もいないのだから。



名前:なし ("%&($#%)

種族:なし

レベル:なし

状態:なし

ステータス:なし

称号:運命を導くもの

スキル

・落下耐性



これが俺のステータスだ。

なーにこれ、ツッコミどころばっかり。

まぁ俺は器のない『存在』として認識されるかどうかレベルだ。

称号がやけにかっこいいのが気になるが、本当に何もないままの転生となった。



残り30秒。

やばいやばいやばい。冷静装ってステータスなんか優雅に見ていたけどもうすぐ死ぬ!いまだに空の上を落下中!

どうしよどうしよどうしよ、なにか生物とか物とかに憑依しないと死ぬ!

ん?おっ!

俺が落下するであろう地点には大きな魔物と少女がいた。

よし!少女に憑依しよう!どうして森の中にいるのか、どうして少女なのかなど様々な疑問はあったのだがてんぱっている俺にはそんなのはどうでもよく憑依する生物がそこにいただけ幸せだったのだ。




ずどーーーーん


俺が地面に落下して、俺の生存時間は残り10秒。

必死に声を出そうとする。

な、なんだこれ!うまく口ができねぇ!

そりゃそうか俺今『何でもない何か』なんだもんな!器ナシの!

ぐぞおおお!!声、でろおおおお!



あぁ…意識がかすれていく…。

残り時間は…



3…2…1…













「は…は…はは…やったぜ…器の確保成功だぜ…。」

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