いきなり大魔導! ~地主の息子で天才魔導師! だが魔法は目とか尻から出る~

あけちともあき

第一章・覚醒のいきなり大魔導

第1話 プロローグという名のホットスタート

 いきなりだが、俺は魔法の天才だったらしい。

 現在の状況は、一見すると絶体絶命。

 俺の周囲はフル武装の、骸骨頭の金属鎧に囲まれているし、俺は素手で普段着である。

 背後には、手負いの女戦士が腕を抑えてうずくまっているし、周囲は徐々に薄暗くなっていく山の中。

 大変な状況だ。

 だが、骸骨の戦士たちは、絶対的に不利そうな俺と女戦士に襲いかかってこない。

 理由は簡単だ。


 俺の拳に、青白い輝きが宿っている。

 さっきこの骸骨頭に襲われた時、咄嗟に放った何かだ。

 何なのかは分からん。

 だが、多分魔法だ。


「ふっ……魔法だ」


 俺は思ったまま口にして、青く光る拳をぶんぶん振ってみせた。

 骸骨どもが、「おお」とか「ぬう」とか言いながらちょっと後ろに下がる。

 ビビっている。


「貴様、ただの村人だと思っていたが……まさか魔法使いとはな……!!」


 骸骨共のリーダー格らしき、額に一本角がある真紅の骸骨鎧が渋い声を出した。


「このキーン村に、貴様のような魔法使いがいるという情報は聞いていないぞ。斥候の子鬼どもめ、手を抜きおったな」


「なるほど」


 俺は重厚な感じで頷いてみせた。

 一本角のリーダーが何を言っているのか分からなかったからだ。

 分からない時、俺はとりあえず、なるほど、とか言う。

 これでだいたい誤魔化せる。


「だが、一つだけ間違いを訂正してもらおう。俺はただの村人ではない」


 ゆらりと、俺は青く輝く拳を構える。


「な、なにぃ」


 ざわめき、骸骨どもが身構える。


「キーン村の地主の次男坊にして、無職。ウェスカーだ。隙あり」


 奴らの目には、俺の目が輝いたように見えただろう。

 これは、拳の輝きを目に移動させて、そこから魔法として放ったのだ。

 目から放たれた魔法が、骸骨の一体に炸裂して、


「ウグワーッ!!」


 奴は鎧の隙間から煙を吹きながら倒れた。


「目から魔法を!! こ、こいつ、人間じゃない!」


「いや人間です」


 俺はゆるり、ゆるりと骸骨共に詰め寄っていく。

 近づく必要は無いのだが、何だか、今は俺がこいつらを圧倒している空気ではないか。

 折角だから追い詰めておこう。


「くうっ、だが、魔法使いならば身のこなしは鈍いはず!! 者ども、一斉にかかれ!!」


「おおーっ!!」


 赤いリーダーが号令を下した。


「なにっ」


 俺は困った。

 まさか追い詰めたら一斉に反撃してくるとは!

 何も考えていなかった。


「くっ、魔法!!」


 俺は腕に宿った青い光を放つ。


「ウグワーッ!!」


 襲い掛かってきていた骸骨戦士が一人倒れた。

 

「まほ」


「死ねえ!!」


 間に合わなかった。

 ぶんっと振られた剣が俺に迫る。

 絶体絶命である。

 ここで、俺の頭の中を今までの思い出が流れ始めた。

 これは一体なんであろうか。

 突然、時間の流れが遅くなったように感じる。

 せっかくだから、この思い出の流れに合わせて、これまでの状況を振り返ってみよう。

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