冴えない僕が殺し屋をやったら活躍しすぎて困ってます
@poketan
殺し屋になる前の僕
「佐藤は運動できねーから、2軍な」
2軍なんて言っているんだけど、体育の授業だ。部活はやってないし、運動なんて大っ嫌いだ。世の中勉強できればいいんだからな…
「おい!もっと勉強しろよ、幾次…また41点だぞ‼︎補講ギリギリ狙いやがって!」
「はい…すいません。」
(勉強したのに…。ずっと机の前いたんだけどな。最近なんか集中できない。)
席に戻ろうとする時に、足を引っ掛けられた。
「あ、いて」
ズッテーンとこけた僕を見て、クラスメートが笑っている。
ああ!イライラする。文字では伝わらない憤りや退屈感が僕を襲った。
ようするに僕はなにもできないのだ。
いじめられてるわけではないけど、目立った友達もいない。テストも悪いけど、最低限は取れている。ようするに良くも悪くも刺激がないのだ。これが僕の人生。こんな人生変えたい。
いつのまにか目は落窪んで、刺激に渇望するようになった。勉強に没頭し、何か才能を見つけたいと思った。こんな僕でも一位になれるものが欲しいと、
「佐藤は今日も2軍な」
「いや、たまには出してよ」
「なんだよ!生意気な!」
「なに?喧嘩するの?」
「ケッ!もういいやめた!ハブろうぜ!」 (つまんな)
本当にこいつらの底が知れる。なんてつまらない人生なんだ。
「佐藤!すごいじゃないか!学年2位だぞ!すごい進歩だ!」
「いや、2位でそんなに褒めるんですか?」
「え?っておい!佐藤!待てー」
つまらなすぎて教室を出た。保健室のベットに向かって走った。こんだけ勉強して2位なんて。才能がない。よし、体育のサッカーを練習しよう。
「サッカー11人対佐藤ね」
いつものつまらない連中のリーダーが提案してきた。ごぼう抜きしてシュートを決めた。
「こいつ、強え!!!」
(お前らが弱すぎるだけだ。)
「お前、見直したぜ!今日から一緒にプレーしような!」
「うん。」
と、生返事をした。こいつらなんかに認められても嬉しくなんかない。
自然と友達が増えていった。努力すればするほど。でも、本来願っていた才能は手に入らない。この前も、サッカー部に誘われて入ったものの…。
「よっしゃ!強い新入りが来た。地区大会突破頑張ろう!」
無論、ずっと練習してきた先輩たちは自分よりも強く勉強になった。
しかし、自分はメキメキと強くなって先輩たちよりも上手くできるようになった。部活が楽しくなっていった。そんなある日部室に入ると、
「才能が憎い!なんで俺たちじゃ止められない!」
「あいつ、フィジカル面では課題があるけど、小回りがきくから、止められねえよ。テクニックは部活1だな。」
悔しがる先輩を陰からみて、自分はにんまりと笑った。才能があると思われたのははじめてだった。
自分の小回りや先輩のフィジカルを生かして、地区大会は下克上の嵐で、敵チームを突破していった。そして決勝。
「去年の県大会優勝校、鉄壁学園だな。あいつらはディフェンスが硬い。特に、体がデカすぎる。あいつらにフィジカルで勝つのは無理だ。佐藤、期待しているぞ!」
「はい!」
腹の底から声が出た。期待しているという言葉が嬉しかった。
「試合が終了しました。1-0で鉄壁学園の勝利です。」
ナレーションが響く。
「これはしょうがないや。これで引退か。」
「あの山田哲次郎っていう一年生は期待の新人で、オファーが殺到してたらしいな。」
「ありゃ破格だわ。小回りどころか、移動速度も読みも桁違いだ。」
「佐藤も才能あるから、来年に期待だな。」
(あの天才が一年なら、俺は永久に2番手にしかなれない。そんなの嫌だ。)
「先輩、俺部活やめます」
「ええっ!!!」
と、いうようなことがあった。
そんな日常を大きく変える出来事があった帰り道の話。
「おい!ちょっとこっち来な」
「ひぃぃい、助けて!」
裏路地でサングラスの男が金ピカの服の男を連れて行くのを見た。あとをつけて見ることにした。
「あんたぁ、浮気はよくねえな。殺せっていう依頼きてるんだ。」
殺し屋か。目立つ殺し屋なんて、才能ないな。
「銃で脅すなぁ!ひぃぃい。おおおおまえもそんなの撃ったら近所の人に通報されるぞ。」
「まあ、いい。とりあえず起きろ!」
そう言ってサングラスが金ピカを起こした瞬間。
「うういいううう、」 バタン。
…死んだのか?
「銃なんて使うかっつーの」
そう言って振り返った男と目があった。
「お前!いつのまに!」
「ああ、すいません」
これは、死んだのか?金ピカじゃなくて俺が。
「お前、足音がなかったぞ。それに、その目!殺し屋じゃねえか。そして地味な雰囲気。気づきもしねえ!弱そうな見た目も最高だ。何より、死体見て驚かねえなんてな。」
「いや、自分の心配をしました。その銃はハッタリで毒殺ですか。僕と握手しないでくださいね。」
自然と言葉が出てきた。殺し屋は怖いが、初めてみるものへのワクワクが勝っていた。
「なんだお前、サイコパスじゃねえのか?こりゃ最高だ!お前才能あるよ。さあ、うちの会社こい!」
「「こねえと殺す」」
「ですよね」
「お前、、、マジ最高!」
サングラスのおじさんに連れて行かれて僕は会社に向かう。才能があるか確かめたい、その一心で。
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