万引き犯の罪をなすり付けられた女性を助けたら、学校の美少女でした。

海男

第一章

1ー1




 彼女はいつも『無表情』だった。


 入学式の代表挨拶からも無表情で冷静な女子だと思っていた。


 しかし、その彼女は綺麗でもあった。その美形から何人かの男子が告白したらしいが如く振った伝説がある。



 俺はそんな彼女の印象は『遠い存在』だと認識していただけだった。




 これからは関係ない、関係する事が無いと思っていた……




 そう、あの日までは…







 六限目のチャイムが鳴り、みんな帰る準備をしていた。


 俺は黒崎 達也 高校二年生だ。公立高校に通っており普通の学生という奴だ。


「なぁ!達也!」


「うん?なんだ?」


 目の前に座ったのは悪友でもある荒木 裕次郎だ。赤毛の青少年で、運動系の部活に入っており今度、県大会があると言っていた。


「この後さ、部活終わった後にカラオケ行くんだけど行かね?」


「またか?お前、前回の中間テストで赤点取りそうになっただろ?」


「ぐっ、それはその〜そう!勉強ばかりじゃストレスが溜まるだけだし息抜きだよ、息抜き!」


「俺はそのセリフを毎日帰りに聞いてる気がするんだけどな」


 荒木は運動は抜群なのだが、頭の方に関しては馬鹿だからテストではいつもギリギリなのだ。


 そんな状況なのに関わらず遊びに行こうと誘ってくる荒木に対して苦笑しながらお誘いを断った。



「ごめんな、俺はこの後用事があって…」


「用事ってなんだよー」


「そんな子供みたいに頬っぺたを膨らませんなよ」


「親友でもあるこの俺様を置いて用事を取る事自体に拗ねているのです!なんて、まぁ用事ならしょうがねーや」


「この埋め合わせはいつかするよ」


「おう、了解したぜ。この部活もあるしじゃあな!相棒!」


「あぁ、頑張ってこい!」



 荒木は学生バックを肩に背負い脱兎の如くササッと教室を出て部活へと向かって行った。俺はそれを見届けて学生バックを持ち教室から出て行った。







「現在の時刻、5時30分か……まだ間に合うしコンビニにでも寄ろうかな…」




 乗る予定の電車の時間が6時なので間に合うと思い歩いて駅に向かう事にした。

 自分の家からは電車を使うのでいつも時間を気にしているが今日は間に合うと思いコンビニに寄る事に決めた。



「何買おうかな……飲み物でも買って帰って飲むか」



 コンビニ特有の音楽が鳴り、飲み物コースで飲み物を選んでいると一人の制服を着た女性が弁当コーナーで選んでいた。



(あの人って……隣のクラスの白崎 結衣…だっけ?)



 制服姿をして手提げバックを持ちながら弁当を見ていた。

 学校でも噂になっていたが本当に綺麗でモデル級の美形を持ち合わせていた。


(今日の夜ご飯でも悩んでるのかな?)


 俺も悩んだ末に、桃味の自然水を持ってレジに行こうとしたら3人の女子がさっき言っていた女子に近づいていくのが見えた。


(あの3人って…うわぁ、いじめっ子の3人じゃねーか)


 さっき言っていた結衣さんの同じクラスでもある3人組で、クラスの上位人でもあり関わりたく無い人にとっては避けたい人物の3人だ。


 その3人が結衣さんにニヤニヤとしながら近づいて行った。その3人の真ん中に居る女子が何やらお菓子を持っていてそのお菓子を結衣さんの手提げバックに入れているのが見てしまった。


(あの!性悪女!何やってんの!?)


 手提げバックに入れた瞬間、3人組は少し離れて白崎さんが会計しにレジに向かうのを見届けていた。


(やばいぞ!白崎さん気付いてない!教えないと!)


 手に持っていた天然水を元に戻して結衣さんに言おうとしたその時だった。


「あれぇ〜白崎さん〜その手提げバックに何か入れたよねぇ〜?」


「………」


「え…?」


 さっき言っていた性悪女が近づき手提げバックに盗んだ物があると言った。言われた白崎さんは無表情で無言だった。


「す、少し見せて貰いますね」


「……」


「これって……お菓子コーナーにあるチョコですよね」


「やっぱり〜入ってた〜!あんた最低ね、お菓子を盗むなんて」


 自分が入れた癖に白崎さんが盗んだ事にし始めたのだ。

 取り巻きの二人もニヤニヤと笑っていて店員もそれを信じて白崎さんを疑うように見ていた。


(こっの性悪女っ!白崎さんに万引きの罪を付ける気か!)


 俺は心の底からあの性悪女に対して憤怒の感情が浮かび上がり今にも刺し殺しそうになりながらもその感情を抑え込んだ。


「どうなんですか?盗んだんですね」


「本当の事言いなさいよ〜。私最初から見たんだから〜」


「………」


「なんか言ったらどうですか!これ、貴方が盗んだんですね!」


「……はぁ」


 性悪女3人組と店員に対して結衣さんはため息を吐いた。

 ため息を吐かれた性悪女3人組と店員は最初は驚き、怒りの表情をした。


「なんですか!ため息を吐いて!万引きとして警察を呼びますよ!」


「最低ー、万引きの癖にため息とか…あ、学校にでも広めよっかなぁ〜」


 またニヤニヤとし始めた3人組と怒り始めた店員よりも俺は窮地の状態に立っているのに冷静にいる白崎さんに対して驚いた。


(なんでやばい状況なのにそんなに冷静に入れられるんだ?)


 そんな事を考えながらも3人組と店員に近づいて話かけた。


「あの、すみません」


「なんですか?今この子達と話してる途中なんですが」


「誰お前?同じ制服だし…あ、丁度良いや、この女ね万引きしたんだよ〜、最低だよね?」


 俺が同じ学校と知ると性悪女は学校にも広めようと考えたの俺にも白崎さんが万引きしたと言ってきた。


 そんな性悪女に向かって俺は笑顔にニコニコと言ってやった。


「あ?何言ってんだお前、お前の方が最低じゃねーか」


「は?何言ってんの?」


「俺はなお前がこの女子の手提げバックにお菓子を入れてたのを最初っから見てたんだよ」


「え…?それは本当なんですか?」


「えぇ、白崎さんが弁当コーナーでいた時にこの3人組がお菓子を持って近づき手提げバックに入れていたのをこの目で見ました」


 その話を聞いた性悪女3人組はニヤニヤ顔から驚きと焦りが混ざった顔になっていた。


「は、はぁ?!あんた、何嘘ついてんの!?」


「……」


「それが本当なら、貴方達にも話を聞く用が出来ましたね」


「最初から聞いてたけど、本当にお前ら最低だな」


「私がその万引き女に万引きの罪をなすりつけたって言う証拠はあんの!」


「確かに……」


(こいつ、性悪女だと思ってたけど馬鹿では無かったのか……うわぁ、めんどくさ)


 性悪の女だけど、馬鹿では無かったらしく自分が手提げバックにお菓子を入れて万引きの罪をなすりつけたと言う証拠を見せろと言ってきた。


 俺はコンビニの天井角を見ると監視カメラはあるが丁度カメラが見えている角度は白崎さんが隠れておりそれを含めてこの性悪女は言ったのだと気づいた。


(その証拠にニヤニヤと笑ってきやがってるし)


 こんな会話をしているのに関わらず結衣さんは最初からじっと無表情で俺の方へ見ていたのだ。


「えっと…何か?」


「………」


「あの〜何か言って貰わないと分からないんですけどー」


「……なんとか出来るの?」


 白崎さんから初めて話された言葉はこの状況をどうにか出来るのかと言われ、彼女の真っ黒の双眸が俺の目を見据えていた。


 その時、俺の心の底から『やってやるよ』と言う言葉で埋め尽くされ、やる気に満ちていた。


「もちろん、でなきゃ最初っからこんなにでしゃばって無いよ」



(やってやるよ……この性悪女3人を叩き落としてやるよ、ククククク)







ーーー

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