ガンGun玩具 ~ 決闘に負けたアウトローなガンマンは、気が付くと悪役令嬢になっていました ~
武田コウ
第1話 ご機嫌なモンがあるじゃねえか
・・・・・・・・・
「なんだ、随分とご機嫌なモンがあるじゃねぇか」
粗暴な口調でそう呟いたのは、その口調からはかけ離れた気品のある容姿をした、ブロンド髪の少女、シャーロット・アノーヴァ。
所々泥で汚れてはいるが、身に付けている衣服も高級で、彼女が高貴な身分の人間であると見る者に悟らせる。
シャーロットが見ているのは、硝子ケースに収められた二丁のリボルバー銃。ご丁寧に側には銃弾も展示されている。
彼女は硝子ケースを破壊しようと右足を持ち上げ・・・ドレスのせいで行動が制限されている事を悟ると、忌々しそうに舌打ちをした。
「・・・・・・非常事態だ、後でしかってくれるなよパパさん」
少しためらうようにそう言った後、シャーロットは小ぶりなナイフを懐から取りだして、何とその場で自身のスカートに大きな切れ込みを入れた。
ドレスが大きく避け、スリットからシャーロットの美しい足が露出する。彼女はそのスラリと長い足を大きく持ち上げ、勢いをつけると、硝子ケースを一気にケリ壊した。
砕け散る硝子の破片。しかしそれを気にもとめないシャーロットは、目を輝かせてショーケースの中身を取りだした。
2丁のリボルバー銃は、恐らく長くの間展示されていたのだろうが、特別な魔法の処理を施されていたらしく、機能になんら問題はなさそうだった。
シャーロットはニヤリと笑って銃に弾を込めた。
◇
「みんな無事!?」
荒れた息を整えながら、勇者ショウ・カンザキは、周囲のクラスメイトに向かって呼びかける。少し遅れてついてきた二人の少女は、大丈夫だとばかりにショウに微笑みかけた。
「はい・・・大丈夫ですわ。これも勇者様が私たちを守って下さったおかげですわね」
鮮やかな青色の髪をした少女が、こびるような口調でショウにしだれかかる。そんな少女を見て、イライラしたように、もう一人の赤髪の少女が声を荒げた。
「まだ何も解決していないわよ!! それに、シャーロットとはぐれちゃったから早く合流しないと・・・」
「あら、シャーロットさんなら大丈夫でしょう? だってかの大貴族、アノーヴァ家の第一子ですものね」
嘲るようにそう言い放った青髪の少女に、赤髪の少女はカッとなって掴みかかった。
「シャーロットは呪いの影響で魔法が使えないのよ!? それを放っておくなんて・・・見殺しと一緒じゃない!」
一触即発の雰囲気の中、勇者ショウが仲介に入る。
「言い争っている場合じゃないよ・・・そうだね、カリンが言うとおりシャーロットが心配だ。すぐに探しに行こう」
「そうは言いましても勇者様・・・ここは王国最大規模の敷地を誇るグランツ博物館。闇雲に探しても見つかりませんわよ?」
青髪の少女の言葉に、ショウは少し考える様子を見せた。
確かに闇雲に探した所で見つかるものでもない・・・しかし何もしないという訳にもいかないのだ。
次の瞬間、何かを感じ取ったショウは、素早く剣を構えた。キッと鋭い目線を向けたその先には武装した兵士達の姿。その数は7人。
いかにショウの戦闘力が高いとはいえ、彼はまだ学生・・・対する相手は、特殊訓練を積んだ戦闘のプロが7人。二人の少女を守りながら戦うのは困難を極めた。
「おやおや、この人数差で勝つつもりかな? フフ、勇者を気取ったクソガキに現実を教えてやるとしよう」
敵兵の中から前に進み出てきた一人の男。極限まで鍛え上げられた体と、幾重もの戦場をくぐり抜けた鋭い目線。整髪料によりベッタリとまとめられた髪型を、几帳面に手でなでつけた。
「ベリル隊長!? まさかアナタが王国を裏切ったというのか!」
ショウの言葉に、王国軍第三部隊の部隊長、ベリル・バランはニヤリと凶悪に笑った。
「青いな勇者君。まさかアナタが・・・だって? 君が私の何を知っているというのだね? 何も知らないまま無様に死ぬといい」
そして部下に合図を送るベリル。6人の兵士達は一斉に攻撃魔法の展開を始める。
このまま終わってしまうのか。ショウが諦めかけた次の瞬間、乾いた破裂音と供に、魔法を展開していた兵士の数名が、血を吹き出してその場で転倒した。
「よおクソッタレども! 鉛弾の味はどうだい? 天国にも昇る味ってヤツだろう?」
凜とした少女の声で紡がれる粗暴な言葉。ショウが振り返ると、背後には見慣れない鉄製の武器を構えたシャーロットの姿。
高級なドレスはボロボロにやぶれ、彼女がどれだけの修羅場をくぐり抜けてきたかという事を悟らせるが、その瞳はギラギラと怪しい光を放っていた。
「さあ踊ろうぜぃハニー!」
さあ始めようか、
一人の不幸なガンマンに訪れた
クソッタレな物語を・・・・・・。
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