非正規社員だから彼女にフラれたけど質問ある?

盛山ユキオ

第1話

※最初にお断りしておきますが、この物語はフィクションであり、主人公の「私」を含めて実在の人物や団体とは関係ありませんのでご了承ください。


【第1章~私の問題意識~】


私の名前は盛山ユキオ。30代男性である。そして非正規社員である。


非正規社員という存在に対して、読者の方々はどのような印象をお持ちだろうか。


収入が低いとか、雇用が不安定といった印象が多いのではないだろうか。


日本は2004年以降、格差社会であるという認識が広まっていった。中央大学の山田昌弘教授が書いた「希望格差社会」というタイトルの本がこの時期に出されたが、その後、ユーキャンの流行語に格差社会がノミネートされるまでに至っている。


では、30代の未婚で非正規社員の男性は、この格差社会で、どのような立ち位置にいるのだろうか?


恋愛や婚活市場では少なくとも弱者に位置付けられるのではないだろうか。


私の周囲の男性で非正規社員で結婚できた人はほとんどいない。多くは正社員だ。


男性の結婚は年収や雇用形態に強い相関関係がある。これは、多くの研究者が指摘している。


2019年1月13日の朝日新聞の朝刊に記載された調査によると女性の44パーセントが結婚相手の男性の雇用形態を「大いに意識する」とし、41パーセントが「ある程度意識する」と答えている。


合わせると、実に85パーセントの女性が男性の雇用形態を意識していることになる。


これに対して男性の雇用形態を「全く意識しない」と答えた女性は4パーセントしかいなかった。


つまり、非正規社員男性の私は、このわずか4パーセントの女性の中から自分と合う人を見つけ出さなければならないのだ。


そんなことは、砂漠の中から宝石を見つけ出すに等しいことだろう。


親族などは、こんな事情を知らないからなのか、「結婚しないの?」という悪意ある言葉を私に浴びせてくることがある。


そんな時、私はドヤ顔で「俺、非正規社員なんで」といい、専門家が書いた本から学んだ格差社会に関する知識をひけらかす。


まあ、そんな時は大抵、ドン引きされるのだが。


そんな時、私は思い付いた。


女性が男性の雇用形態を気にするのであれば、いわゆる「ドーピング」をしてしまえばいいのでは?と。


つまり、高スペック男子しか参加できない婚活パーティーや街コンで、しかるべき服装やなりふりで参加して、自分が非正規社員ってことを隠せばいいのではないか?そして年収を上手く誤魔化せばいいのでは?


つまり、非正規社員男性が雇用形態を隠せば彼女ができるのかという社会的な「実験」をしようというわけだ。


そして、私は実際にその実験をやってみた。


この小説は、そのような実験を行った30代の未婚、非正規社員男性の物語である。


尚、「実験」の定義については、後ほど詳しく書く。

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