第二話『1000回目の白い世界2』


「何でも何も、貴方が来たんでしょうが。ボクの至福の一時を邪魔しに!」


 俺の目の前には、少し怒った顔の女の子。もとい、女神さんが立っていた。


 最近一人称が、『私』から『ボク』に変わったのだ、かなり失礼と分かっているが、俺はこの変化に、娘の成長の様なものを感じている。


 と、それどころじゃない。

これはどういうことだ?まぁ犯人は分かってるけどね……。


「ナビィ?いや、ナビィさん?いつの間に転移したの?」


「今すぐ転移すると言ったのは御主人様マスターです。聞かなくても良いと言ったのも御主人様マスターです」


 戸惑っている俺に、横に立っているナビィさんはそう言った。


「うんそうだね!確かに言ったよ!けど、速すぎだろ!」


「私は、詠唱破棄の『特殊技能スキル』を持っていますので、これくらいは当然です」


 と、ドヤ顔のナビィさん。


「いやいや、『詠唱破棄スキル』どころか、『術式破棄種族スキル』だろこれ!」


 術式が全く無い魔法とか、もうそれは魔法とも言えない何かだろ!


 俺はナビィさんに更に文句を言おうとした。


 その時、完全に蚊帳の外になっていた女神さんが、俺とナビィさんの前で両腕を上げ、声を上げた。


「ボクを無視するとは、いい度胸だね!」


「いや、いきなり来て悪かったよ。と言うか何でそんなに怒ってるんだよ。いきなり転移で来るなんていつもの事だろ?」


 実はこれまで、数百回は同じ事をしている。勿論わざとだが。

理由は簡単で、女神さんのビックリした顔が面白いからだ。しかし、ここまで怒っているのは、今回が初めてだ。


 俺は、何に怒ってるのか分からず、顔をひねった。


「はー?こんな事がいつもあってたまるもんですか!今の状況をよく見なさい!!」


 そう言われてよく見てみると、白い地面にクッキーやケーキなどのお菓子が落ちていた。

 更に、

少し奥には一柱分の椅子と、紅茶の用意をしてあるカフェテーブルがあった。


「そうか分かったぞ!おやつの邪魔したからそんなに怒ってるんだな!これくらいのお菓子なら俺も作れるから、そんな怒るなよ。な?」


「うぅ…、本当なんでしょうね!嘘だったら許しませんからね!」


 うん、チョロいな、うちの女神。


「分かった。分かったから、そんな泣きそうな顔しなくてもいいだろ……」


 怒りきったからなのか、物凄く泣きそうな顔で言ってくる女神さん。


 俺はそんな姿負け、お菓子を作ることになった。


 泣きそうになると、前の口調が戻るんだよ……。本当に可愛いな、うちの子。あ、女神さんだった。


 なんて、そんな事を考えていると、、


御主人様マスター、最低ですね」


 かなり冷たい感じにナビィさんに言われてしまった。

 心の声は聞こえないようにしてるのに……、エスパーかな?


「うるせぇ!これはお前のせいでもあるんだから手伝えよ!まったく!」


 その顔やめろ!

その汚い物を見るみたいな目で見てくるな!

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