第6話 相談2(どうやって関係を深めるか)
「一ノ瀬さん!あの幼馴染との話はどうなりましたか?」
幼馴染への挨拶を成功させた日の夕方、バイト終わりに柳瀬さんに声をかけられた。
「ああ、なんとか挨拶は成功したよ。向こうも俺の名前覚えてくれてたみたいで……」
「そうなんですか!?上手くいって良かったです!これで失敗していたら、私の責任が問われますからね」
柳瀬さんは自分のことのように喜んではしゃいでくれた。
「ははは、流石にそんなことしないよ」
「それで、それで、どんな感じでした?幼馴染さんの反応は?」
やはり女の子というもの、恋の話は好きなようで目を輝かせて聞いてくる。
普段ならここまでぐいぐい来られると引いてしまったかもしれないが、相談にのってくれた相手であるし、久しぶりに好きな人と話せた嬉しさでテンションが上がっていた俺は、つい惚気てしまった。
「いやー、それが聞いてよ。その子、俺が話しかけたら、最初慌てた感じだったんだけど、すぐに嬉しそうに微笑んでくれてさ、もうめっちゃ可愛かった!」
朝話したときの幼馴染の様子を思い出し、やはり可愛く、ついにやけてしまう。
「きゃー!甘いですね!甘すぎます!もう、一ノ瀬さん惚気ですか?惚気ですね?本当に一ノ瀬さんは幼馴染のことが大好きなんですね!」
柳瀬さんは黄色い声を上げて、このっこのっ、と肘でつついてくる。
「ま、まあ……」
ここまで言われると流石に恥ずかしくなり、口篭ってしまった。
「もしかしてだけどさ、柳瀬さんも何か良いことあった?」
これ以上自分の好きな人の話をするのは恥ずかしく、話題を逸らす。
今日、柳瀬さんと話していて気付いたことは、普段以上にテンションが高いことだった。
「え、やっぱり分かりますか?実はですね……」
俺が尋ねると柳瀬さんは、えへへ、と恥ずかしそうにしながら今日あった出来事を教えてくれた。
「今日、久しぶりに幼馴染に挨拶してもらったんです!最初こそ急すぎて慌てちゃったんですけど、やっぱり久しぶりに話したら嬉しくて、テンションが上がっちゃいました」
そう言う柳瀬さんは顔をほんのり赤らめて幸せそうに微笑んでいた。
「あはは、柳瀬さん本当に嬉しそう」
「しかもまだあるんです!聞いてください!その幼馴染はこう緊張した感じで噛みながら話しかけてくれたんですよ。私に話しかけるのにそこまで頑張ってくれたんだなって思ったら、こう……なんていうか……キュンとしちゃいました……」
両手で胸を抑えるようにしながら、ポツリと呟いて蕩けるような笑顔ではにかむ柳瀬さん。その姿はとても魅力的で一瞬目を奪われた。
「……へぇ、それにしても同じ日に同じ出来事が起こるなんて奇跡みたいだね」
「そうですよね!私も思いました!まあ最高の1日でしたので全然いいんですけどね」
両方同じ日に同じことが起こったことが一瞬気になったが、それ以上に今日うまくいったことが嬉しく、すぐに忘れてしまった。
「それでさ、また一つ相談なんだけど……」
「いいですよ!任せて下さい!」
キラリと目を輝かせて、柳瀬さんは見つめてくる。
「話しかけることには成功したんだけど、この後どうやって関係を深めていったらいいと思う?何かいい案はない?」
「そういうことでしたら、まずは褒めてみたらどうですか?褒められて嫌な人はいないですし」
「なるほどね。確かに褒められるのが不快な人はいないよね。じゃあそうしてみるよ」
柳瀬さんの提案は確かに理にかなっている。褒めることなら出来そうだし、嫌な人もいないだろう。
明日実行しようと、俺は決意した。
「あーあ、私も好きな人に褒められてみたいです。また話せるか分からないですけど、もし……好きな人に褒められたら……きっとドキドキしちゃいますね……」
想像するような様子できゅっと口をすぼめ、甘く蕩けるような声で小さく溢す柳瀬さん。
頰を朱に染めた姿はどこか色っぽくて、彼女の可愛らしさを引き立てていた。
「きっとそのうち褒めてもらえるよ」
俺はとりあえずそうフォローしておいた。
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