異世界グルメハンターズ

あきかん

その化け物を人は海竜と呼んだ

 猟が始る、朝まだき、空は白々と明け初めた。野には甘い香りが漂い、森の木々は美しい緑に輝いている。さあ、猟犬を解き放ち、その吠声に皇帝と美しき花嫁の眠りを醒させろ、そして皇帝の弟君も。

~王都ラヴィニアの民謡~


 「死にてえのか、手前は!」

 バルトはヴァンダルを突飛ばした。ヴァンダルがいた場所に巨大なハサミが通りすぎる。

 海竜と呼ばれるモンスターだ。刃を通さぬ外骨格。長い髭を携えた面長な顔。殻が何層にも折り重なっては伸びる尻尾。その姿が伝説で語られる竜に似ていることから、人はこの種を海竜と名付けた。

 今、バルト達の目の前にいる海竜の両手はハサミになっている。ハサミとは言ったが、刃はなくゴツゴツした外皮から握り潰すのが目的なのだろう。


 「我法を破り、理を超え破軍の力ここに得んとする者なり。ゴートの荒ぶる火炎よ。眼前の障害を駆逐せよ。我求めるは完全なる殲滅!第三の業火、マキシマグマ!」

 タモーラは魔法を放つ。バルト達は見計らったように引いた。

 海竜は業火に包まれる。周りの木々にも火は燃え移り海竜へと倒れていった。

 「これで倒れなかったら打つ手がないな、バルト!」

 火炎が揺らぐ。魔法による炎は強ければ強いほど直ぐに消える。一説には、周囲の火のエレメントを集めるためだと言われている。

火炎が揺らぐ。治まりつつあった火の手の中から海竜が這い出て来た。

「ヴァンダル!いくぞ!」

海竜は火に弱いわけではない。しかし、高熱には弱い。肉が固まり動きが散漫になる。後は仕上げだ。

ヴァンダルは鉄槌を海竜の頭に振り下ろした。外骨格が割れ海竜は動きを止めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る