開門の攻防
天使は基本1人暮らしの者が多い。それ故に建物の高さは低くく小さい。ただ人口は多いので建物が密集しているので住宅地は規模が大きい。
その建物が土煙を上げながら次々と倒壊していく。
4人の天使による攻防は地上へ空中へと目まぐるしく展開しながら激しさを増していく。
大剣を受け流し、ハンマーを避け飛んでくる矢を叩き切る。
「おまえ、本当に強いな、感心するわ」
ノースが誉める。
「誉めて頂きありがとうございます」
カノンはそうは言うものの流石に3人相手で少なからず傷を負い始めている。
(このままだと段々分が悪くなりますね。ニサ達が到着するまでに門をどうにかしないといけませんね)
天使の町に声が響く。
「魔物の侵略と思われる攻撃が確認されました。住民の皆さんは避難シェルターに避難してください。軍の関係者。戦える者は至急町の魔物の対処をお願いします。
これよりトリス様率いる軍により魔物討伐の為進軍を開始します。
繰り返します……」
(段取りが良すぎますね。まずは私がどれだけ踏ん張れるかです。切り札はもう少し温存したいものですが)
カノンは周りの風景を見ながら大体の位置を把握する。
(門までまだ距離がありますか。徐々に近づいて行けば何とかなりますかね)
***
ニサとメサイアは遠くに見える天使の町に違和感を感じていた。
「煙? あんなに町で黒く昇ることあったかしら?」
「むっ メサイアも おかしいと思う」
「ですわよね、もう少し急ぎますわよ」
「むっ 了解」
加速する2人。進むと次第に森が騒がしいのを感じとる。
魔物以外の野生動物が騒いで、我先に逃げるように走り回っている。
明らかにおかしい。その異変に嫌な予感を感じながら飛んでいると、1匹のルプス族が慌てて近づいてくる。
「ニサ様とメサイア様ですね、伝言です! 開戦しました!」
「わかりましたわ、ありがとうございます」
「むっ ニサ 急ぐ!」
2人は更に加速するため、低空飛行をやめ空へと高度を上げる。
高度を上げたことで町の異変も鮮明に見え始める。
全力で飛んで行くと眼下に天使の町から一番近いサロメ村が見えてくる。
上空からでも人の気配が無いのが分かる。
「生存者を探したいところですが、これ以上被害がでない為にもわたくし達は進みますわよ!」
生存者を探さないことに納得していない顔をしながらニサはメサイアに強めの口調で話す。
メサイアもそれを感じ取ってニサを急かす。
「むっ ニサ スピード落ちた 急ぐ!」
「分かってますわよ! 下に敵は確認出来ませんから降りても意味はないですわ。急ぎますわよ!」
自分に納得させるようにそう言いながら進むニサの表情はやはり納得していなかった。
***
私たちは森の中をかなりのスピードで走る。
我ながらこのスピードと体力、人間では無いのを改めて実感させられる。
私が小さい頃思い描いてた天使や魔女とは全く違う姿がここにはある。
険しい森の中の道なき道を物凄いスピードで走る姿は忍者か?
以外にサキさんの姿は間違ってないかもとかどうでもいいことを考えながら走っていると、ミカが危険を察知し知らせる。
「何かいる! 気配から例の魔物だ! おそらく4匹」
ミカの察知能力は天使の中でもずば抜けて高く範囲もかなり広い。
「あたしが行く! 大体の場所を教えてくれ!」
舞が鎌を召喚し先頭に立つ。
「右手側に2匹、後は進行方向に縦に距離を置いて2匹!」
「先手必勝!
体に雷を纏い電気を帯びた鎌を振り木ごと2匹の魔物を横に真っ二つにする。
そのまま地面に雷の後をつけながら飛ぶように前進し残りの魔物2匹を斬る。
魔物の残骸を見てミカが不思議そうに言う。
「この魔物武器を持ってないけど、新種とは違うのかな?」
舞が鎌を髪の毛に戻しながら答える。
「ミカがこの間言ってた奴だろ。確かに手応えないというか弱すぎるよな」
確かに弱いがそれ以前に疑問を感じる。
「なんでこの魔物、ここにいたのかな?」
私の疑問にミカも舞も何かに気付いた顔をして呟く
「待ち伏せ!?」
その答え合わせをするかのようにヤエちゃんが慌てた様子で飛んでくる。
「葵様、予定より早く戦いが始まりました。そしてこちらに見たことのない魔物が近づいて来ています」
ヤエちゃんの言葉に私たちは確信を持つ。
「情報が漏れてるね。明らかに私たちの裏をかいてきてる。
ヤエちゃんありがとう。ここは危険だから後ろに下がってて」
私の言葉にヤエちゃんはちょっと躊躇したけど直ぐに「皆さん、お気をつけて」と言って飛び立つ。
「内通者がいたか……今となってはどうしようもないけどな。
ミカ、葵。魔物と戦いになって、ある程度数を引き付けたら2人で先に行け」
舞の意見にミカが直ぐに否定する
「3人で戦った方が早く戦いも終わるし効率も良い、マイを置いていく理由なんて無いはずだよ!」
小さいため息をついて舞はミカに優しく話す
「いいか、この中であたしが一番弱い。アリエル達に到達して勝てる確率の高い奴が行くべきだろ。
それに塀のギリギリまで行って引き付ける、狙いは葵の可能性が高いからな遠くで引き付けても意味無いだろ。
それまでは3人で戦う。それまで数多く倒してあたしを楽させてくれよな」
ちょっと納得いってない顔をしながらミカは渋々了承する。
「無理はさせないから」
「私も全力でやるから、舞を置いていくのは嫌だからね」
私がそう言うとちょとだけミカがニッコリ笑ってくれた。
***
「シュラーク」盾を召喚しカノンは攻撃を繰り出す。
盾による攻撃、シールドアタックなどのレベルではなく文字通り攻撃をする。敵にとって厄介なのはしっかりと盾としても使ってくることだ。
相手の攻撃を受ける、弾く、流すを行いながら、器用に持ち方を変え手の平、甲、拳で攻撃をする。
「トリス様が言っていたぜ、あんたが一番厄介だって。良く分かった。ほんと、つえー。こっちも遊んでらんねぇな」
ノースが本当に感心したように言う。
そして左目にしている眼帯を千切り投げ捨てる。下から出てくるのは、山羊のように横に細長い瞳孔。その瞳孔が赤く光だす。
「魔女化させてもらうぜ!」
ノースはそう言うと一瞬でカノンに間合いを積め大剣を振るう。
盾で受け止めるが盾ごと吹き飛ばされ家の壁を突き破る。
「ノース、おれらも魔女化するか?」
マズルカの問いに、カノンを吹き飛ばしたんだ方を睨んだままノースは答える。
「準備はしてくれ、なるべく温存はしておきたいが……」
ドーーーーン!!
瓦礫が吹き飛ぶ。
「ったく、ほんと嫌な奴だぜ」
ノースがぼやく。
瓦礫から出てきたカノンの右目は元のエメラルドグリーンの瞳より深い緑色に光りを放っている。羽の色も白ではなく薄い緑色に染まり淡く輝いている。
「切り札は残しておきたかったかったんですけど。仕方ありません。私も魔女の力使わせて頂きます」
「おい! マズルカ、ナグアルお前らも……」
ズドーーーーーーン!!!!
ノースがそう言いかけたとき凄まじい爆発音がする。
音のする方を振り替えると正門が崩れ落ち始めている。
「なっ、何があった」
焦る3人に対しカノンは微笑む。
「とりあえず、私の勝ちですね」
***
門の近くでソフィーが埃まみれになり咳き込んでいる。
「けふぉ、ごほ、これはたまんないわね。魔法の威力と同等だけど発動が速くて良いわ。シーフォーとかいったかしら? 人間の兵器も侮れないわね。
使いきりなのが欠点だけど」
壊れた門から見える町の外を見て祈るように言う。
「門は開けたわ。後はお願いね」
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