第6日 どいつもコイツもマネキン頼り


今日、家族と共に衣料品店に行った。


私は昔から衣類、ファッションというものにこれといって関心がない。

「これはカッコいい」とか、

「これはダサい」とかの物差しが無い。


客観的に見て違和感の無いファッションというものがわからない。ようやくこの歳になってファッションという言葉通りに人に見せて恥ずかしくない格好を身に付けた。センスが絶望的すぎる。夏休みの小学生のような格好がノーマルになっていた、クソダサい。


さて、店について一番に見るのはマネキン。

どれも店員さんがさささっとコーディネートした服を身に付けてちょっとイケたポーズ取っている。顔はのっぺりで、体は健康で理想的なすらりとした体型、真っ白か真っ黒の肌。

服を引き立たせる完成形といえるそのボディは我が肉体とは遠くかけ離れている。


悲しいが、人それぞれ体型や顔つきは決まっていて、改善してもそれが己であるという事実は変わらない。

どれだけ男が頑張っても、佐藤健や星野源や綾野剛にはなれないし、

女がいくら頑張っても、新垣結衣や橋本環奈や綾瀬はるかにはなれないのだ。

そして彼ら彼女らだって、

マネキンにはなれない。


衣服というのは着る者によってイメージを変える鎧だ、服が人を作るのではなくて、あくまで人が服を着こなす、引き立たせるしかない。


己のアイデンティティの確立の為に衣類にこだわろうと一秒考えたあとに、恥ずかしくない格好を、PTOを守った適当な鎧を何着かの組み合わせで着ることで、日日のルーティーンが出来上がって、結論としてアイデンティティの確立が自動的に行われる。


アイツはパーカーのイメージ。

アイツはジーパンが好き。

あの子はワンピースでかわいい。


そんなイメージ、

みんなにもあるんでは無いだろうか。

少なくとも私は服や髪型などの外見で人を覚える癖があるので、鎧を脱がれると辛いけれど、

好きなあの子の嫌いなアイツもマネキンのように服を着こなしているように思えるので、結局着る物など適当でいいんじゃないだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る