25話

 翌朝、僕を護ってくれた枝葉に「ありがとう」とお礼を言って周囲を見渡した。

 そこには、通夜にでも通っているのかと思うほど羽虫達妖精たちが疲れ切って俯いていた。


 まあ、うん。何となく状況把握できるけど、悪いことしたり言ったりしたらお灸を据えるのが普通だよね。

 簡単に許しちゃったら反省しなくても問題ないと勘違いするだろうし、アレ《妖精たち》にとって一番ツラい罰を与えてる僕は悪くない。

 ―――てことで、僕は今日も森探索する。


 気分を変えたい僕にとっては、今いるこの森が一番安全に思えた。

 木々の間からはキラキラと木漏れ日が差し込んでて、まるで欝々うつうつとした気持ちが癒されていくような気になってくる。


 いやいや、僕の昨日までの沈んだというか殺伐としたような気持ちだけが浄化されていくような晴れやかな気がするってだけで僕自身が浄化されてるわけじゃないからね!?


 それにしても、最初の頃も思ったけど季節感無視したように様々な花が咲いてるよね。

 なんでかな?何度も疑問に思ってしまう。考えても意味も答えも出てこない。

 むしろ、逆に疑問が増えるだけで考えるのを放棄したくなる。


 あの世に近い場所なら『あの人』にも会えたりしないのかな・・・

 そんなことを考えながら散策するとポツンと空に向かって儚げに咲いてる花を見つけた。



「あ、白くて可愛い花」



 顔を近づけ匂いを嗅いでみるけど、全くと言っていいほど匂いがしない。

 花にもいろいろあるけど、こんなに綺麗なのに香りがしないなんてどうしてだろう。


 こういう時は、お馴染の神様から貰った知識で検索かな。



『イチゲソウ:青い空を見上げるように咲く純白の花は直径が3~4cmほどですが、見る者をハッとさせるような存在感があり一輪だけ咲くことから名付けられた。山の中にひっそりと咲いて一瞬の命を輝かせたあと、花も葉も枯れて消え、また思い出したかのように咲くことからつきました。(日本ではイチリンソウと呼ばれている)』


「へぇ~、でも待って?この花って季節で言ったら春に咲くものじゃないの??」



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