5話

「話したくないなら構わないが・・・答えるまで、ずっとこのままだけど良いのかい?」



 僕の口から「うぐっ・・・」という声が漏れた。

 ずっと、彼の腕の中なんて嫌すぎる・・・



「はぁ~・・・。どうせ話しても信じないでしょ」


「話してみなきゃ分からないこともあるだろう?」


「誰も信じないって分かってるから話したくない・・・」


「俺は君が素直に話してくれたら納得するよ」


「ウソだ」



 即答で、彼の言葉が嘘だと分かった。

 目の奥が仄暗かったから・・・

 腕の中は嫌だけど、今話しても信じない。

 信じて、また裏切られるのは・・・もう・・・たくさんだ。



「即答だな・・・」


「・・・・・・」


「なぁ、君は何を恐れているんだ?」


「関係ないでしょ、そんなこと・・・」



 バッサリぶった切る僕の言葉を聞いても、短い溜息を吐くだけで何もしてこない。

 ふと視線を彷徨わせていると、見たこともない花が咲いているのが目に入った。

 僕は思わず「かわいい」と呟いてた。

 その言葉を聞き逃さなかった男は、不思議そうに僕を見つめているけど気にせず花を見つめていた。



「おい、何を見ているんだ?」


「ちょっと近くで見たいから放して」


「こちらの質問が先なんだ。放せるわけにはいかないと言っているだろう」


「今すぐ放さないと僕死ぬよ。嘘じゃないよ。情報聞き出す前に死なれたら、責任はそっちがとるんだよね?僕どうなっても知らないからね」



 矢継ぎ早に言ってのけると、その男は渋々と放れてくれた。

 逃げるのは簡単だけど、今は花が先。

 気になったままじゃ死ねないからね。



「あ、やっぱり可愛い花だ。何の花だろう?」


「何を見ているんだ?それは・・・?」


「ん~・・・キャンディータフト・・・?花も可愛いけど名前も可愛いなぁ」


「キャンディー?飴か?食えるのか?」


「食べ物じゃないし。というか煩い」



 またしてもピシャリとぶった切る。

 だって、静かに観賞してるのに耳元でペチャペチャと囀るんだよ?

 煩いじゃん。邪魔じゃん。

 何より執拗いのが、一番嫌!!

 キャンディータフトのことは、あとでゆっくり知識を引っ張りだそうかな。

 うん、そうしよう・・・


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