4話

 どんなに逃げても彼は追いかけるのを諦めない。

 正直・・・執拗い、ウザい、邪魔の三拍子揃っている。

 振り切るのは簡単だけど、目が覚めたばかりでドコに何があるのか分からないし立ち止まって質問に答えよ。



「なに?」


「はぁっ、はぁっ・・・君、速いね・・・」


「僕急いでるの。用がないならついて来ないで」


「用はある。君、どうしてこんな森に居たんだい?」


「目が覚めたら、あそこにいただけ。答えたし、もういいよね」



 正直、面倒い。だから、さっさと逃げ去りたかった。

 死に急ぐ僕に第二の人生をのんびり旅をしながら過ごせばいいって神様は言ってた。

 なのに、何で人に追いかけ回されてるの・・・?



「待てって!! 」



 ガシッと肩を捉まれ強引に引き寄せられた僕は、よろけて彼の胸の中にすっぽり納まった。

 って・・・待て待て待て!!!!

 どうして僕が抱きしめられてるの!!!?

 可笑しいでしょ!?!?



「あ、あの、放してっ!! 」


「放したら、君は逃げるだろう?」


「当たり前です!! 」


「逃げると分かって放す人間はいないよ?」



 ジタバタしていても、がっちり抱きしめられた状態では抜け出せるわけもない・・・

 それでも、何とかして逃げようと奮闘するも彼の腕の中からの脱出は不可能だった。


 僕は、とうとう疲れ果ててグッタリと大人しくなった。

 でも、諦めたわけじゃないかんね!!!!

(ビシッと擬音が聞こえる気がしたけど・・・気のせいだよね・・・?)



「漸く大人しくなったか・・・」


「・・・・・・」


「俺と君の体格差を考えたら敵うわけないだろう?まだ質問は残っているんだ。それを答えてもらわないと放せないんだよ」


「・・・話す・・・こと、なんて・・・ない・・・」


「森にいた理由は分かった。では、何故そんな軽装で森の中を歩いていたんだ?」


「・・・・・・」


「ここは人の住まない森で有名なんだ。そこに君がいれば不審に思うのは仕方ないことだと思わないか?」


「・・・・・・」



 次々に質問してくる彼に一切答えなかった。

 僕は『彼』というより人間全てを信じられない。

 だから答えない・・・

 他人に殺されるのは嫌だけど、このまま答えずにいれば必ず怒鳴り声を上げ殴る蹴るの暴力を振るう。

 だから信じない。心を許さない。


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