「死にたがりの僕は異世界でのんびり旅をする」

鴻上 紫苑

Prologue.

「おじいちゃん、早く早く。小川に虫がいっぱいいるよー」


「これ待ちなさい。そんなに慌てると転ぶぞ」


「えへへっ、大丈夫だよー。・・・わあっ!」



 ドテッと転んだ僕を抱き上げ、傷がないか確認する大好きなおじいちゃん。

 すらっとした高身長で品のある優しいおじいちゃん。

 いつも笑顔で、いろんなことを教えてくれる物知りなおじいちゃん。



 ・・・・・・でも、本当の言葉は教えてくれない・・・・・・



 お父さんも、お母さんも、みんな真実の言葉を継いでくれない。

 物心ついた頃から、僕は要らない子になっていた。


 期待もされない。

 愛情も注いでくれない。

 毎日、毎日、毎日、怒鳴りながら飽きもせずに殴ってくる。



「あんたなんか生まれてこなければよかったのよ!」


「お前は俺達の間に出来た子供じゃない」


「拾われてきた子供を情けで育ててやってるんだ」


「ほんと役に立たないわねぇ」


「お前はいらない子、見捨てられた子」


「お前を愛してくれる人間なんか、この世にいない」


「生きる価値なんかない。あるとすれば、それは生きる者全ての慰み者になることだ」



 僕がいらない子なら死んでもいいよね・・・

 もう・・・疲れた・・・

 明るく振る舞うのも、頑張るのも、考えるのも、疲れたよ・・・


 夢も希望も失望に、絶望に変わるだけの人生。

 楽しいと思えることなんてない。

 好きの感情なんてわかんない。

 安らげるのなら、このまま朽ちて二度と生まれてきたくない。


 僕の人生は何だったんだろう・・・

 上辺だけの言葉ばかりで誰も僕を必要としていない。

 いつも僕を陰でクスクス嘲笑い、バケツに入ってる汚水をぶっかけバイ菌扱い。

 僕の何を知ってるんだと怒ってた時期もあるけど、今はそれも諦めた。


 この世に生まれても生きる希望がないなら死にたい。

 誰とも関わりたくない。











 ・・・・・・このまま眠りついて、朽ち果てたい・・・・・・

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