らいむ
かつたけい
プロローグ
ここは淡い光の差し込む海の中です。
まるで幻灯絵のように、人魚姫のシルエットが映っています。
ぶくぶくぶく
可愛らしいその身体から、あぶくが生まれてはふわふわ、ぱちん。
ふわふわ、ぱちん。
ぶくぶくぶくぶく
ぶくぶくぶくぶく
この無数のシャボン玉のような中には、何が入っているの?
と、泡の一つへ右手を伸ばしました。
嘆き?
怒り?
不安?
やすらぎ?
憎悪?
悲しみ?
ねたみ?
自分が何を感じているのか、自分という存在が何であったのか、自分でもまったく分からず、それがとても心細かったからです。
その時です。
人魚姫の、その伸ばした右腕のすべてが、一瞬にして泡と化していました。
泡はゆらゆらと、上がっていきます。
その泡へと、今度は左手を伸ばしました。
でも、触れることは出来ませんでした。
そうです。左手も右手と同じように、すべてが泡になっていたのです。
わたしは、幸せだったのですか?
手で触れて確かめることの出来なくなった人魚姫は、それならば、と神様に尋ねました。
でも、神様どころかだあれも答えてはくれませんでした。
ぶくぶくぶくぶく
ぶくぶくぶくぶく
こうして人魚姫の身体は泡になり、海の中へと溶けていったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます