第2話

しばらくすると、今度はOL風の女がその猫の傍に来て、


「あら、かわいい」


そう言いながらしゃがみこんで猫をなでた。


『にゃー』

「きみは、ニャーコなんだね。

かわいいね。

それに比べて私の彼氏はほんっとにかわいげがない!」


『にゃー』

「あぁ、ごめんね。

急に大きな声出して。

でもね、ほんとに嫌になる。

私だってもうすぐ三十になるんだから、マジに結婚のこと考えてるのに、彼は年下だから、まだ本当に子どもで、結婚のことも『考えてるよ』とか言いながら、ちっとも行動には出してくれない」


『にゃー』

「そうよね。

確かに年下を選んだのは私だから、文句は言えないけど、それにしても、もう少し真剣に考えてる態度を見せて欲しいのよね」


『にゃー』

「そうぉ?あなたも女だから、最近の男のだらしなさに呆れてるっていうのね。

同感だわ。

やっぱり時代は女の時代ね」


『にゃー』

「うん、そうしてみる。

ちゃんとこっちからも話してみる。

男が優柔不断なら女が引っ張ればいいんだもんね。

ありがとう。

ニャーコも幸せにね」


そういうと、立ち上がったOLは、猫をひとなですると、足取りも力強く、家路に向かい歩き出した。 


残された猫は、黙って女を見送った。


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