青春

「あの頃は、なんか毎日がワクワクして。ホントに楽しかったなぁ……。知里ちゃんや戸田くんや寺下くん。みんな元気かなぁ……?」


「うん。楽しかった。まさに、青春だったね」



〝青春〟ーーーーーー。



「……うん。青春、だったね」


私は笑顔でうなずいた。


「青春を共にしたアイツらも、元気でやってるのかねー。確か……戸田はどっかの会社の営業やってて、寺下は雑誌の編集部かなんかで仕事してたよねー。知里は……」


「薬剤師さん、じゃなかったけ?」


「そうそう、薬剤師!で、かおりはお花屋さんの店長。私はカフェの店長。っていうかさ、私とかおり、ダブル店長でかなりがんばってるよね」


2人で顔を見合わせて笑っちゃった。


「みんなも変わらずがんばってんのかなぁ。もしかしたら、仕事とかも変わってるかもしれないねー。みんな大人になって……。いろいろ忙しくなって。なかなか連絡取りづらくなって。もうだいぶ会ってないもんねぇ」


「うん……。そうだねぇ……」



高林くんが亡くなって。


5人になって。


卒業してからも、最初の頃はたまにみんなで集まったりもしてたんだけど。


それぞれの生活や仕事があって。


5人揃うのは難しくなってきて。


集まれる機会も少なくなってきてーーー。


今では、懐かしい想い出のメンバーになっている。



みんな大人になったね。


私は、高校卒業後は短大を出て、しばらく事務の仕事をしていたんだけど。


お花屋さんを経営していた親戚のおじさんが病気で倒れてしまって。


それで、ちょっとでも手助けできれば……と思って、おじさんの代わりにたん時間だけ私がお店に立つようになったんだけど。


元々お花も大好きだったし、事務の仕事が好きっていうわけでもなかったから、おじさんのお花屋さんをたたむかもしれないって聞いた時。


私でよければ、この店を守りたいーーーー。


そう思ったんだよね。


小さいけれど、ホントに素敵なお花屋さんで、私も大好きだったから。


そして。


今は、そのお花屋さんの店長として働く毎日を送っている。



そして早紀は、濃厚ミートソースとふわふわのパンケーキが美味しいと人気で有名な、オシャレなカフェの店長さんをしてがんばっている。


黒いギャルソンエプロンがすごく似合ってて、早紀カッコイイんだー。


テキパキ指示してみんなをまとめて、尚且つみんなに慕われる早紀は、ホントにすごい。


同じ店長でも、私は早紀みたいにみんなをまとめたりする力量は持ち合わせてはいないけど。


私なりにお花とお客さんに愛情を持って、私らしく精一杯がんばってる。


私には、合ってる仕事だと思う。


このお花屋さんで働けることに感謝。


早紀が働いてるカフェの店内にも、私がアレンジした花や鉢植えが置いてあるんだよ。


「……今さ、なんとなく早紀のお店のこと考えてたら。久しぶりにパンケーキ食べたくなった」


私がちょっと笑いながら言うと、早紀も笑った。


「わかった。私いなくても、かおりが来たらパンケーキの生クリームちょっと多めにしとくようバイトの子に言っとく」


「ホント?やったー」


笑い合う私と早紀。


パジャマで寝転びながらのおしゃべりは楽しい。


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