言霊魔術士〜異世界ラッパーの最強韻踏術
山田 弘
プロローグ
「優勝はMCカルマー!」
その瞬間、俺は右手を上に突き出し、会場の歓声を浴びた。日本一を決めるラップバトルの大会にカルマというMCネームで出場し、優勝した俺は余韻に浸りながら帰り道を歩いていた。もうすっかり夜になっていた。暗くて人気のない道を歩いていた俺は、調子に乗って赤信号の横断歩道を渡ってしまった。横断歩道の真ん中まで渡ったその時、俺はこっちに向かってくる車に気付かず事故に巻き込まれた。
「こ、ここは・・・・・・」
俺はいつの間にか草原の上に寝ていた。見たことない景色に思わず飛び起きた俺は、周りを見渡した。周りには何もなく、空は雲一つなく青空が広がっている。ここはどこか?俺はどうなったのか?状況が飲み込めない俺をさらに混乱させる事態が起こる。
「ようやくお目覚めかな〜MCカルマ!」
陽気な声が俺の頭に直接聞こえて来た。
「俺様の名前は脳内ナビゲーションkami!これから君のサポートをして行くぜ、よろしく!」
kamiは高めのテンションで自己紹介をした。
「ここはどこなんだ?俺はどうなったんだ?」
俺はkamiに何がどうなってるのか聞いた。
「君は交通事故に遭って死んで、この世界に転生したのさ。そして今君がいるのがアスラ草原!主に低レベルのモンスターが生息している草原さ!」
「モ、モンスター!?」
その言葉を聞いた俺は死んだ後にも関わらず、命の危機を感じた。すると、その直感を感じたかのように何かがこっちに向かってくるのが見えた。「おい、なんかこっちに来るぞ」俺は頭の中でそうkamiに言うと、
「あれはゴブリンだね!ちょうどいいね、敵は一匹しかいないからやっつけちゃおう。」
「やっつけるって、武器も何も持ってないぞ!」
「大丈夫、君のお得意のラップで倒しちゃえばいいのさ!さあ、マイクをイメージして」
kamiの言ってることがいまいち理解できなかったが、俺はkamiに言われた通りにマイクをイメージした。するとその瞬間、俺はマイクを握っていた。驚く俺をよそに、kamiが続けて説明する。
「今の君のレベルだと四小節が限界かな。おっと、ゴブリンが近づいてきたよ」
マイクの出現に気を取られていたせいか、いつの間にか俺の目の前にゴブリンが現れた。ゴブリンの上には何やらゲージのようなものがあり、俺の視界の左下には二つのゲージのようなものがある。
「ゴブリンの上にあるのがHPゲージね。君はそれをゼロにすればいいのさ!そして、左下にあるのが君のゲージだ。上が体力、下が魔力ね。魔力がなくなったら、ラップしてもダメージが与えられないから気をつけてね!体力がなくなったら、本当の終わりだよ!それじゃあゴブリンを倒してみよう、MCカルマ、bring on the beat!!」kamiの掛け声とともにスクラッチ音が鳴った。すると俺はいつものようにラップをし始めた。
「お前のカラーは全身緑、仲間がいなくていつも一人、俺に触ればお前は凍り、MCカルマは横を素通り」俺は必死の思いで四小節のラップをした。同時に頭の中で鳴っていた音楽が止まった。kamiが「終了!」と言うと、ゴブリンの様子がおかしくなった。なんと体が氷漬けになり、次の瞬間、凍っていたゴブリンが砕けたのだ。
「いきなりの氷結攻撃だー!素晴らしいね」kamiはそう言って俺のことを褒めた。初めての先頭で息切れしてしまった俺はその場に座り込んだ。
一息ついた俺は「なあ、kami、次はどうすればいい?」と聞いた。「始まりの街、ナディアに向かおう!そこは駆け出しの冒険者が集まる街だ。まずは色々と必要な物を揃えないとね。街までは俺様が案内するよ!」
kamiは意気揚々と俺にアドバイスをした。俺は少し不安ながらも、ナディアに向かって歩き始めた。
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