第17話 私の幼なじみは、ときどきイケメンになるようだ。

「みなせん、次体育だから一緒に着替え行こー」


そう話かけて来たのは、友達のマッツーだ。


「今日の体育、男子も女子も陸上なんだってー。私走るの苦手、みなせんは?」

「うーん、そんなに苦手じゃないかな」

「うわー、可愛くて、頭良くて、その上運動も得意とか」

「得意じゃなくて苦手ってだけ」


そんなことを言い合いながら、2人で校庭へ移動する。


そう言えば、関谷は足が速かったっけ。



準備運動を終え、軽く走り込んだ後、男子の方が少しざわついていた。気になって、ふと目を向けると、男子に囲まれる関谷の姿があった。


「お前足も速いとか、マジないわー」

「ズリーぞ関谷!」


そんな男子たちの声が、こっちにまで届いてくる。

そんな中関谷は、


流れる汗を、シャツの裾で拭っていた。


キャッと、女子の方で小さく悲鳴が上がる。きっと私以外でも見ていた女子がいたのだろう。


シャツをめくった時に、チラッと見えた腹筋を。


あいつ、意外と割れてるんだなと、意外と男らしいんだなと、……カッコイイなと思った。

……いやいや、カッコイイってなにカッコイイっ

て。あいつはただの幼なじみだし。


「次、水瀬」

「はい」


体育の先生に呼ばれて、慌てて返事をする。

関谷のことは、いったん忘れよう。



体育が終わったあと、マッツーが話しかけてきた。


「みなせんさー、さっき関谷くんの腹筋ガン見してたよねー」

「………してない」

「いーって隠さなくて。確かに反則だよね、私、関谷くんに興味ないけど、あれはドキッとしたよ」

「だよね……そうだよそうなんだよ!あれは別に興味なくても見ちゃうよね。うん、見ちゃう見ちゃう」


私は、そう自分に言い聞かせた。

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