第12話 私の幼なじみについて

「みなせん、一緒にお昼ご飯食べよう」


そう声を掛けてきてくれたのは、私の斜め前の席の松田ことマッツーだ。ちなみに、みなせんは私のあだ名である。マッツーが付けてくれた。

机をくっつけ、2人でお弁当を開ける。


「ていうかさ、みなせんは関谷くんと付き合ってるるの?」


その質問に、私は思いっきり顔を顰めた。


「みなせん、顔がヤンキーみたいになってるよ」

「だって、マッツーまでそんなこと言うんだもん」

「じゃあ、やっぱり付き合ってないんだ」

「もー、わかってるなら聞かないでよー。もうこの質問耳にタコなんだから」

「そっかー、でも、あんまりにも距離が近いからさ」

「あー、でもそれは分からなくもない」

「えっ、それみなせんが言うの」

「んー、なんかさー、あいつとは幼なじみの期間が長すぎて、普通の距離感がイマイチわかんないんだよねー。私たちの中じゃ普通なんだけど、周りから見たら近すぎてドン引かれたこともあるし」

「あー、やっぱりね」

「やっぱりねって」

「だって、明らかに距離近いもん。なのにそれを無意識でやってるもんだから、よけい厄介よねー」


そう言いながら、美味しそうにご飯を頬張るマッツー。

私も、今日のお弁当のメインであろうハンバーグを口へ運ぶ。


「あと、関谷くんてさ、結構女子に人気なの知ってる?」

「あー、知ってるっていうか、やっぱりって感じだな」

「そうなの?」

「うん、あいつなんだかんだ中学の時からの人気あったし。別に驚く程じゃない」

「そうなんだ。まぁ、関谷くんって普通にカッコイイよね」


マッツーの言葉に一瞬ビクッとしたが、なんとか顔色を変えずに平然を装う。


確かに、あいつは客観的に見ればカッコイイ部類に入ると思う。私は、もうあいつのことなんて見慣れてるから思わないけど。ただ、ときどき、たまぁに、イケメンだなと思うことがある。ホントたまにだけど。

あいつモテるし、そのうち彼女とか出来るんだろうなー。


あいつは、もし彼女が出来ても、私と今の距離感で接してくれるんだろうか。


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