9枚目 お昼休みは屋上で

 お昼休み、いつも私たちは屋上でお弁当を食べます。この学校の屋上は常時開放されており、ここでお昼ごはんを食べる生徒は少なくありません。きれいに手入れのされた裏庭が見えて、その先の家々の立ち並ぶ牧歌的な風景が楽しいのです。


「おっすー、ヒメ、サト、もう来てたんか~。」


「お、ケイとテンコも来たわね。」


「遅いぞ。あたしは腹が減った。」


「ごめんごめん、授業が長引いてたんだ~。」


 私はお姉ちゃんがお弁当を作ってくれるのですが、今日はサラダとレバパテと生ハムとチーズのベーグル。ケイちゃんは自分で作ってきているらしいです、他の二人は、コンビニや購買で買っているみたい。


「で、今日のお昼の音楽担当は誰だっけか。」


「今日は私ね。持ってきたわよ。じゃん!アルゼンチンのフォルクローレバンドPuente Celesteの4th、"Canciones"!」


 Bluetoothのスピーカーから瑞々しいギターとピアノのフレーズ、柔らかくて優しいボーカルが流れる。独特のリズム感で描かれるフォルクローレ。


「アルゼンチン音響派と言われるパーカッショニストのサンティアゴ・バスケスが率いるバンドでね、前衛的な要素を多く取り入れてきたグループなんだけれど、このアルバムはそういうアルゼンチン音響派以降の要素がうまく溶け込んだ、素直で美しい楽曲を聴かせてくれるのよ。」


「あ、アルゼンチン音響派ならわかるよ~!Juana Molinaとか!この"Otra Vez El Mar"って曲いいねえ~。」


「パーカッション、かっけえ!サンプリングしたくなるいい音してんなぁ!」


「アルゼンチン音響派ならあたしのエクスペリメンタルアンテナもビビッと反応するぞ。」


「さすがサトちゃん!みんなの好みを満たすいいチョイスだねえ~!」


 うららかな晴れ空に爽やかで美しい郷愁感が漂う音楽が流れる。いつもより美味しいご飯が食べられた気がします。


☆ ☆ ☆


Puente Celeste - Canciones - 2009

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