手のひらのひだまり
蒼村 咲
第0話 プロローグ
「──では、生徒会長の佐々木玲奈さんより、新入生の皆さんに歓迎の挨拶をしてもらいます」
司会を務める教務の先生に紹介され、玲奈は壇上へと向かった。何百という目がこちらに注目しているのがわかる。
(ああ、なんか……)
被害妄想かもしれない。でもなんだか、「がっかり」されてるような気がするのだ。
すらりと高い背にサラサラのロングヘアが揺れる。成績は常にトップクラスで一般生徒からの人望も厚い、才色兼備の人気者。そんな「女子生徒会長」像とは程遠い自分が生徒会長であることに。
「──新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」
マイクを通した声が体育館に反響する。声にはっと反応してこちらを見上げる子もいれば、もうすでに興味を失っている子もいて面白い。壇上からは、彼らが思っている以上にいろんなものが見えるのだ。
みんなこれまでにさんざん長い話を聞かされているのはわかっているので、長い話はしない。時間にしてせいぜい三分足らずだろうか。挨拶はいつもそれくらいにまとめてしまっている。
「──皆さんの高校生活が充実したものとなるよう祈念し、会長挨拶といたします」
玲奈は一礼して壇上を退き、壁際に並ぶ先生たちの列にまぎれた。
ここまで来たらもう安心だ。誰ももうこちらを見てはいないし、次に生徒会長として彼らの前に出るのはかなり先になる。
それも、文化祭や体育祭などのイベントの開閉会式なので、今日みたいに注目を浴びることはない。
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