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 パンパンパンと花火の音が聞こえてきて、シヴァは頭を抱えた。


(あんの馬鹿は何をしてるんだ……)


 実際に本人に問えば「演出です」とケロリと答えそうなので、絶対に訊かないが、誰かを捕まえて無性に問いたい。


 あの馬鹿は、何だってこんなくだらないことをしているんだ、と。


 ミリアムを怒らせてどん底まで落ち込んでいるアスヴィルも、花火の音を聞いて顔を引きつらせている。


「ついに帰ってきましたね……」


「帰ってきたな」


 互いに顔を見合わせてため息をつく。


 シヴァは額をおさえた。


「あの馬鹿がここにあいさつに来ている間に、沙良とミリアムをどこかに避難させておけ」


 いつまでも隠し通せられるとは思っていないが、気分屋のあの弟が、せめて沙良に対する興味を失うまでは隠しておきたい。


「いっそ、もう一度城から追い出す方法を考えてくださいよ……」


 アスヴィルの言葉に、それができるならそうしたいところだ、と半ば本気で考えた。


「それでは、沙良とミリアムを閉じ込めるのに、南の塔あたりをお借りしても?」


「ああ、好きにしろ」


「……沙良はともかく、ミリアムが素直に従ってくれればいいんですが……」


 気の立った猫さながらに鋭い爪で引っかかれることは想定内だ。それだけですめばいいのだが、とアスヴィルは戦々恐々としながら部屋を出ていこうとした。


 ――だが。


 アスヴィルが出ていくよりも早くに魔王の私室を訪れた従者によって想定外の発言がおとされた。


「セリウス様が、沙良様のお部屋に向かわれたようです」


 ピシィと部屋の空気が凍りついた。

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