キモ男が夢見る理想的女子の思考(試作)
高丈敏
第1話
「わたしのとなりにいてください!」
この思いを打ち明けた日からわたしの世界に変化が生じた。正確には何か変わろうとしてる。
今までわたしの周りにはたくさんの人達がいて、孤独とは無縁だったと思いたい。寂しい気持ちなんてわからないくらいに。
ただそれでわたしらしく生きていたのかと訊かれると疑問符が浮かぶ。
ハッキリ言うと誰もわたしのもとから離れないようにしていただけなのかもと後になって思わずにはいられない。
家族や友人、知人、クラスメイト。それらに迎合してひたすら媚びて。嫌われないよう、怖がられないよう、恨み辛み嫉みを買わないよう、大衆に馴染む一人の女子を貫いてきた。
恋なんてしない。深い絆は結ばない。孤独ではないが孤独感は少し拭えない。そんな処世術を身につけるのにそう時間はかからなかった。
だから彼が現れた時点でわたしの打ち立てたルールや経験則は水泡に帰す。
一目惚れ。広い砂漠の中で一際綺麗な砂粒をひとつみつけたよう。
見た目もステータスもそこそこ良くて、中身はまだもう少し触れ合ってみないと本質を見抜くのに不充分。だけど第一印象は優しかったな。一度わたしの危機を爽やかに救ってくれてる。言うなれば王子様や聖騎士様みたいなもの。悪くない。
わたしにのみ効果を発揮するスキル『魅了』を以てわたしに色眼鏡を使わせる策士。
だからわたしも全力で……いやだけど今までのわたしのスタンスを変えていいものか……。悶々。
しかしあくる日。
思考が途切れーー悩むわたしを尻目にわたしの中で眠っていたはずの行動力はいつの間にかスタートラインに立つことすらなくフライングしてた。
「君の気持ちはわかりました。少し考えさせてください」
これは……玉砕?でも振り文句云われてないし。
「保留という形です。すみません」
い、いえこちらこそこんな突拍子のないこと口走っちゃって……えっ?これってワンチャンあり?
「一週間後までには結論を出します。それでよろしいでしょうか?」
そんなに待ち時間を作られると心臓に悪いような。でもそれだけ真剣に考えてくれるってことだよね?
キモ男が夢見る理想的女子の思考(試作) 高丈敏 @hiro-5001
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