両想いだと思っていた幼馴染に告白したら呆気なくフラれたけど俺は諦めない。

こばや

第1話 フラれて始まる新たなる青春


「ごめん、森文もりふみのこと友達としか思ったことないのよ」


 中学2年の夏手前、俺こと大空 森文は小学校に入る前からの付き合いだった林寺はやしでら なぎに告白して呆気なくフラれた。


 凪とは向かいの家だったため小さい時からよく家を出入りしていたくらいの仲で、いわゆる幼馴染というやつだ。


 好きになったのは小3の頃、地元の野球チームで他のチームと試合をした時のことだ。


 その日は低学年組としての最後の試合の日で、スタメンでサードに入っていた。

 クラスの何人かが見に来て応援してくれて、

 その中に凪もいた。


 結果から言うと結果は3-4で負けてしまった。

 悔しさのあまり、人の目があるのにも関わらず本気で泣いていた。

 応援にしに来てくれた人達が口々に「どんまい」「次頑張ろうね」と言って帰って行く中、凪だけは違った。


「ふみくん頑張ってたもんね……

 かっこよかったよ…!

 次は勝てるよ…!ふみくんなら!」

 と本気で泣きながら、本気で悔しがってくれた。


 凪はちゃんと俺のこと見てくれてたんだなって……

気がついたその時に、凪を好きになっていた。


 だから俺は勘違いしていた。

 凪もきっと俺のことが好きなのだろうと。

 両想いなのだと。

 これから凪と付き合って思う存分イチャイチャできるのだと。


 そう思って今さっきまで過ごしていた。


 だからこそ先程の凪の発言は衝撃的でおもわず「え………?」と言ってしまった。

 

おそらく今俺は物凄く間の抜けた顔をしていることだろう。


 当たり前だ。なぜなら告白したら付き合えると思っていたのだから。


「え、じゃなくてね森文のことは友達としか思ったことないわよ?」


 俺の顔を見て呆れたのか、それとも予期せぬ告白で緊張していたのが解けたのか、ふぅと凪はため息をついていた。


「そっか……残念だなぁ…

 凪と付き合ってイチャイチャしたかったよ…」

 俺は思わず思ってたことを口に出してしまった。今のは流石に聞かれただろう、と思い凪の方を見れなくなってしまった。


 おそらくドン引きしてるのだろう。お互いに無言の時間が続いた。


 始めに口を開いたのは凪だった。

「あのさ、森文…」

 俺に呼びかける。

「なに…?」

 正直な所その先を俺は聞きたくなかった。


 好きな人がいるとかだろうか。それとも実は付き合ってる人がいるとかなのだろうか。


 付き合ってると言われたら納得するしかない。

 凪はとても可愛いのだ。

 肩まで伸びた、サラリとした黒髪で前髪を変わった髪留めで留めているのが特徴だ。例えばカバの髪留めだったり。


 しかも何よりスタイルがいいのだ。

 身長が高く、全体的にスラーっとしていてモデルになっても間違いないくらいにはスタイルがいい。

 その分胸がないのを本人は気にしているようだった。


 それに比べて俺は、あまり目立っていることがないのだ。数学が得意なのと、未だに野球をやっていること以外は至って普通なのだ。

 そして何より俺の身長は低いのだ。

 凪とは真逆である。


 だからこそ他の人が好きになったとしても、俺が選ばれなかったとしても諦められる。



 そう言い聞かせるしかなかった。


「ねぇ、森文聞いてる?」

 俺がぶつくさと考え込んでいると心配そうに凪は俺の顔をのぞき込んでいた。

 目が合うと凪はニコッと笑った。


「ごめん、ちょっと考え込んじゃって」

「ふーん?程々にね~

 それで、さっきの続き言ってもいいの?」

「あ、あぁ…ごめん

 なんか止めちゃって」

「だから謝んないでよ


 えっとね…」

 凪はすぅ…っと息を吸った。

 あぁ、とうとう真実が告げられるのか。


 俺は覚悟を決めた。


「私さ、実は恋ってよくわかんなくてさ

 正直誰とも付き合う気はまだ無いのよね」


 凪から発せられた言葉は意外なものだった。


「誰とも…付き合う気は…」

「ないよー」

 えへへ、と言って凪はにへっと笑っていた。


 他の人ならこれを知ったら諦めるのだろう。

 付き合う気がない子にアタックするのは不毛だと考えるだろう。


 けれど俺はそんなのに負けない。

 誰の人にも心が動かされてないのなら、俺は諦めない。


 凪が俺を好きになるまで俺は絶対に諦めない!


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