舞台ではバブリー

いすみ 静江

舞台ではバブリー

 鳩でも、「寒い」と思うもの。

 冬空に凍えている。

 一人では、寂しいから、誰かに寄り添いたい。


「そうだ。あの屋根の下なら、皆いるかも知れない」


 滑空し、小学校の高い所で自分の居所を探る。

 やはり、皆揃っていた。

 今日は、陽がよく当り、北風も少ないと聞く。


 そんなとき、私が身を寄せている体育館が沸いた。


「次の演目は、『ほんとうの宝物は』です。四年生の発表になります」


 この小窓から、中が見えた。


「あのアナウンスをしている子を知っている。いつも一番に校長先生に朝の挨拶をする女の子だ」


 ポッポー。

 鳩ながらに、「応援しているよ」と鳴いてみた。

 私の体は小さくて、鳩の群れに紛れ込んでいるせいか、気持ちが届かなかったらしい。


「ああ、色んな役があるんだな」


 暫くは、そうして見ていた。

 すると、ガチャガチャと壊したような音楽が流れて来た。

 不思議なダンスをしながら、舞台半分まで登場か。

 一人だけ、キレッキレに踊っている。

 ダンス慣れしているのかな?


「おーほほほほ」


 真ん中の女の子は、何者だ?

 お嬢様にしては、深窓でもなんでもない。

 お姫様には見えるかな。

 きらきらしたお洋服に友達に聞いたことがある扇子とやらを持っているぞ。

 その扇子には、キラキラするものが沢山付いている。

 本当にお金持ちなんだな。


「バブリーは、大判小判と宝石が宝物です」


 変な女の子達だな。

 小学四年生には見えないや。

 周りは、お城みたいだ。

 余計に、きらきらとして見える。


「あ、あの舞台の端っこにいる女の子。家の前に住んでいるひなちゃんだ! ダンスが上手いと思ったら、習い事していたらしいからな」


 その子は、バッと扇子をはためかせて、「もう帰りましょう?」と台詞を言って、皆でダンスをしながら帰って行った。


「キレッキレのダンスも目立っていたのは、ひなちゃんだったんだね」


 窓越しに見渡すと、楽しい秘密がありました。


「お母さんも来ているね」


 心があたたまったので、私は、飛び立った。


「ほんとうの宝物は――。誰かな?」













Fin.

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舞台ではバブリー いすみ 静江 @uhi_cna

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