第九章 ありふれた日常・ただの一般人の章。

第1章 はじめまして、ノアです。

「ただいま」


「おかえり。コラ! 帰って来たら、手を洗い、うがいをしなさいって言ってるでしょ!」


「い、今からやるところだよ」


「グダグダ喋ってないで、とっととやりなさい! 新型コロナウイルス対策よ!」


「そうだぞ」


「行く行く」


 料理をするお袋と、新聞を読むオヤジの横を抜けて、洗面所に行く。


 チラッと新聞の一面を見たら、「全国で非常事態宣言! ステイホーム週間!」と書かれていた。


「俺も危機感を持たないとな」


 俺は念入りに、手洗いとうがいをするのだった。




「オヤジ、お袋、ちょっといいか?」


「あん?」


「なによ? 今じゃないとダメ?」


 ご飯を食べ終え、お袋が洗い物をしようとするタイミングで、俺は声をかけてしまった。


「あーいや、そんな急ぎってわけでもないんだけど・・・」


 どうしよう、後にしとこうかなあ。


『マスター、おかまいなく。私の紹介はいつでも結構ですので』


「( ゚Д゚)は?」

「( ゚Д゚)は?」


「わかった。お袋、引き留めて悪かった」


 俺は自分の部屋に行こうとする。


「ちょ、ちょっと、さっきの声は何よ!?」


「そうだぞ!」


「あー・・・」


 どうやら、話すという流れになった。


 白いスマホをテーブルに置く。


「紹介したいヤツがいるんだ。ノア、テキトーに自己紹介してくれ」


『はじめまして、アーティフィカルインテリジェンスAIのノアと申します。以後、お見知りおきを』


「あーちきちき? え? なんて?」


「え? この電話、誰かに繋がってるの?」


 俺は頭をかいた。


 この2人には、AIの説明が必要みたいだ。


 まあ、俺もそんなに、っていうか、あんまり、っていうか、全然、っていうか、むしろ知らないんだけど、知っている範囲で説明する。


「まあ、簡単に説明すると、コイツはノアっていうAIなんだ。そんで、AIっていうのは、学習や経験してどんどん頭が良くなっていくロボットのこと」


「へー( ゚Д゚)スゴい」

「へー( ゚Д゚)スゴい」


 なんだと思う、あんまり知らないけど。


「まあ、そういうわけで、新しい家族が一人増えるみたいな感覚で、これからノアのこと、よろしく頼む」


不束者ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いいたします』


「・・・あ、ああ」


「・・・え、ええ」


 オヤジとお袋は見るからに、ノアに対して不安そうだ。


 まあ、いきなり、よく知らないAIが今日から家族になるって聞いたら、不安になるのも無理はないだろう。


 だが、気持ちのみぞは、時間がめてくれるはずだ。


 俺は3人だけの時間を作るため、あえて、白いスマホをテーブルに置き去りにし、自分の部屋に入っていった。

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