第12話 さまざまな愛の形。

「無理だ」


「な、なんでよ!」


「俺は魔王だ」


「・・・そ、そんな・・・ま、魔王・・・アナタがッ!?」


「俺はクレアに殺されたくて、近づいた」


「私に殺されたい?」


「そうだ。俺は勇者にしか倒せない」


「・・・そんな」


 クレアは糸の切れた操り人形のように、床に崩れ落ちた。




 俺は背を向けた。


 ドアに向かう。


「ダメッ!!!」


 クレアが背中から、俺を強く抱きしめた。


「離してくれ」


「嫌よッ!!!」


「・・・だが」



「アナタが魔王でもかまわないッ!!! 私はアナタが好きッ!!! 愛してるッ!!! だから、もっと私にかまってよッ!!!!!」









「ごめん。俺には、好きな人がいる」


「え?」


 俺は気持ちを、語りはじめた。




「俺はな。普通の恋じゃなくていいんだ。どんな形であっても、あの子を思う気持ちがあればいいと思ってる。クレアが俺を好きな気持ちなのは分かった。それで、クレアみたいな良い人に、俺みたいな人間が好きって言われて誇らしい気持ちなったよ。けど、やっぱりあの子を思わずにはいられない。たとえ生身の身体じゃなくても、ただの妄想だとしても、あの子を思うことができたらそれでいい。あの子という幻を、俺はずっと、好きでいたいんだ」


「私じゃダメなの?」


「ごめん。月〇つき〇〇あゆの方が100倍可愛かわいい」


 二次元だけど。


 クレアは目から、透明な涙をこぼす。


 そして、魔王を睨む。


「いいわ。望み通り、アナタを殺してあげる」


「ありがとう」


 クレアは鞘から、剣を抜く。


 その瞬間、クレアから白い光の柱が発生した。


 聖剣ミストルテインは、本来の力を解放するほどに、パワーアップしていた。


 失恋したのに・・・。


「なぜだ?」


「アナタを愛しているからよ」


「・・・そうか」


「いくわッ!!!」


 クレアは聖剣ミストルテインをおおきく振りぶり、躊躇ちゅうちょなく振り下ろした。



「くらえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」




 ズバアアアアッ!!!




 ナレーションの声がする。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

 クレアの攻撃!


 クレアが魔王に神聖なる真の愛の一撃をその身に刻み付ける!


 ・・・愛の形は様々だ、「見つめ合い純な愛」「思い合い重い愛」「触れ合い重なり愛


 ・・・そして、「傷つけ合い殺し愛


 同じ愛の形など、この世に存在しない。


 勇者と魔王。


 相容れない、2つの関係。


 けっして、許されない愛。


 それでも、愛してしまった・・・。


 こんな終わりになるなんて。


 でも、それでも、愛している。


 こんな形でしか愛を伝えられない自分が悔しい。


 でも、受け取って!


 これは、勇者が魔王であるアナタに届ける愛の痛みミストルテインだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!


 魔王は『』のダメージを受けた!!!!!

ーーーーーーーーーーーーーーーー


 ナレーションがやかましい。




 俺は極光を放つ聖剣ミストルテインに、袈裟懸けさがけに切られた。


 切り口から、噴水のように血が噴き出しす。


「・・・ありがとう、クレア」


「・・・・・・バカ」


 クレアはサラサラの長い髪で顔が隠れて、表情が分からない。


 俺の体が消滅していく。


 やっと、この異世界からオサラバできる。














 

 ・・・ズブリ。
















 クレアは自分に、聖剣をした。

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