第11話 家庭訪問

 高級パスタ店の帰り。


 アレスは疲弊していた。


「栄養摂取して疲れるってどういうこと? パスタをフォークだけで食べるなんて難しすぎるよ! スプーンが無いと、どうしても犬食いになっちゃうんだよ! それで怒られたり、笑われたりするんだ! 理不尽過ぎるよ! まったくもう!」


『・・・・・・分かる分かる』


 ボクは俺に愚痴っていた。


 パスタなんて、もう一週間ぐらい見たくない気分だ。




 お袋の呼ぶ声がする。


「パスタよ」


「さっそく出たよ!」




 次の日。




「ドキドキして心臓が口から出そうだわ」


「やってみてよ」


「できないわよ」


 ボクとリーナは、ボクの家のドアの前にいた。


 リーナは緊張した様子で固まっている。


「今日はアレスのご両親に挨拶と、私たちが付き合っている報告をするわよ」


「うん」


「ああもう緊張して無理! 帰りたいわ!」


「よし! 決まりだね! バイバイ! リーナ!」


 逃げようとするボクの腕をリーナが強い力で掴む。


「・・・どこ行くの?」


「も、もちろん、ボクの家に付き合っていることを報告に行くのさ!」


「しかたないわね! どうしてもって言うなら、アレスのご両親に挨拶してあげるわよ! フン!」


 リーナが手をつないでくる。


 リーナの手は震えていた。


 そして、リーナは動けないでいた。


 ボクはこっそりとため息を吐き、リーナの手を引いて、家のドアを開けた。

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