第8話 アレスの心。

「誰かこの木を切ってくれんかの?」


 アレスが滑り込む。


「ボクが切るよ!」


「アレスか!」


 これなら、1時間で切れる。


 アレスは手刀で木を叩く。


 パキン。


「グアアアアアア!」


 しまった! 手が折れてしまった!


「アレス、大丈夫か!?」


『・・・・・・大丈夫か!?』


「大丈夫だよ!」


 まだ、逆の手が残ってる!

 

「くらえ!」


 パキン。


「グアアアアアア!」


 手が折れた。


「アレス、まさか逆の手まで!?」


『・・・・・・ウソだろ!?』


「まだ、やれる!」


 アレスは回し蹴りを放つ。


 パキン。


「グアアアアアア!」


「アレスウウウウウウウウウウ!」


『・・・・・・アレスウウウウウウウウウウ!』


 足が折れた。


「・・・まだだ。まだ、諦めない!」


 アレスは片足で立ち上がった。


「もう無理じゃ! アレス、もう諦めるんじゃ!」


『・・・・・・そうだ! 無理するな!』


「まだ片足が残ってる! いくぞ!」


 アレスが飛び蹴りを放つ。


 パキン。


「グアアアアアア!」


「アレスよおおおおおおおおおおおおおお!」


『・・・・・・そうなる気はしていたああああああ!』


 足が折れた。


「両手両足が折れてしまったのじゃ! 早く病院に行きなさい!」


『・・・・・・そうだそうだ!』


 ボクは地面を這って、木に近づく。


 四肢が砕けようと、ボクは諦めない!


「・・・まだ僕には牙が残っている! それでもダメなら、頭突きで切る!」


「やめるんじゃあああああああああああ!」


『・・・・・・やめろおおおおおおおおおおおお!』


「この心臓が止まるその瞬間ときまで、ボクは絶対に諦めたりしないッ!!!」


 アレスは頭を振りかぶった。





「強化の超能力! テヤアアアアア!」


 ズバリ。


 木が切れた。


「リーナ様! ありがとうございます!」


「アレス、大丈夫!?」


 リーナは一目散にアレスに駆け寄る。


「・・・リーナ」


 リーナは涙を流す。


「アレスは馬鹿よ! 無能力なのに無理してるんじゃないわよ!」


「・・・ごめんね」


「すぐに病院に連れて行く! 強化の超能力!」








 ・・・・・・無能力か。








 誰かに見返すとかじゃない。







 ボクは








 誰かの役に立ちたいんだ。

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