番外編その21 鳴との出会い
第一印象は最悪だった。
春一番でめくれ上がった私のスカートの中を彼は堂々と見つめていた。
まだ、見ていないふりや、誤魔化しでもしてくれたらいいのに、彼は事もあろうに「ピンク」私のショーツの色を口にしていた。
100歩譲ってそこまではいいの。
自然現象の起こした事故だし、不可抗力とも言える。
だけど、その後が悪い。
「見た?!」
私の質問に、
「い、いえ見てないです……何も見ていないです」
嘘を返した。
ピンクって私のショーツの色を言い当てておいて、それはない。
見たのなら見たって言えばいい。
男らしくない態度にイラッとした私は、
……つい彼を引っ叩いてしてしまった。
何があっても暴力はいけない、それは私も反省すべき点だったと思っている。
でも許せなかった。
ただでさえ恥ずかしい思いをしたのに、それをわざわざ言葉にして倍増しさせた彼が許せなかった。
……でも、この最低な出会いが最高の出会いに変わるだなんて、この時の私は知る由もなかった。
「おはよう衣織」
「おはよう結衣」
彼女は
親友であり、音楽仲間であり、私の良き理解者だ。
「どうしたん? なんか機嫌悪い?」
「ちょっとね」
思い出すとまだむしゃくしゃする。
「あ……何かあったんだ、言ってみ?」
「別に何でもないわ」
「いや……その言い方、何でもあるじゃん」
さすが親友……鋭い。
「春一番で、スカートがめくれ上がって、恥ずかしかったの」
「あ——っ、私もやられそうになったよ! で、見られたんだ?」
頬杖をつきながらジト目で突っ込む結衣。
「う……うん」
「あははは……それは仕方ないね、事故みたいなもんじゃん」
「そうなんだけど……」
「なになに、ガン見でもされた?」
ガン見……ガン見って感じではなかったけど、見てたはずっと見てたわね。
「ショーツの色……呟いてた」
「何、その勇者!」
「でしょ! 見たことなかったから1年だと思うんだけど」
「まあ、不可抗力とはいえ、感想は言わないで欲しいよね」
「ほんと、それ」
「もしかして、引っ叩いちゃった?」
「う……うん」
「やっぱり! ダメだよ暴力は! 今度会ったら謝っておきな」
「……う、うん」
やっぱりダメだよね。
「あと逆ギレとかされたら怖いから、気を付けなよ」
「うん」
……確かに。
今度会えるまで顔覚えてるかな……、
ちょっとイケメンだったけど、ナヨナヨしていて残念な彼。
だけど、再会の日は遠くなかった。
————————
【あとがき】
パンモロでも言っちゃだめですよね笑
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