第166話 学園祭その1
学園祭当日……朝から何枚写真を撮られたことだろうか。
我がクラスの出し物『男女逆転コンテスト』は昼から行われる予定だった。
しかし、このクオリティーを昼まで放置するのは勿体無いという話になり、午前中は男女逆転コスプレカフェとして、お客様の撮影リクエストにお答えしている。
女装趣味という新たな黒歴史を身に刻んだ僕は、その名に恥じぬ評判で、朝からひっきりなしに撮影のリクエストが入っている。
もう即座にリクエスト通りの笑顔を作るこすら可能だ。
ここまでくれば、隠すとかのレベルではない。
僕イコール女装ってイメージが完全に出来上がっている。
不幸中の幸は、僕のことをルナだと思っている人が誰もいないってことだ。
でも、正直そんなこと、どうでもいい。
……帰りたい。
——凛と愛夏の男装も上々の評判だ。
特に凛は、その一挙手一投足に、女子たちから黄色い声があがっていた。同じ顔なのに羨ましいやつだ。
ちなみに、ユッキーは暇そうにしていた。
「すんませーん」
「あ、はい」
こ、この声は?
振り向くとそこいたのは朝子さんだった。
「音無鳴って知ってはります?」
ど、どうしよう……。
僕ですって答えるのが1番簡単なのだが……抵抗がある。
そんなことを考えていると「おーっ! 音無鳴! 久しぶり!」
凛が木村さんに思いっきりハグされていた。
「あれ? 君、背が縮んだ?」
んなわけない。
「ちげーよ! 私は凛だ! 鳴はあっちだよ」
もちろん凛は素直に僕を指差した。
「なんやて! 音無鳴?」
朝子さんにすごい勢いで睨まれた。
「ど……どうもご無沙汰してます」
「音無鳴!」
城ホール前の再現のように木村さんが飛びついてきた。
そして、その再現のように僕は『ラッキータッチ』を発動してしまった。
でも厳密には再現ではない。今回僕は女の子仕草で防御したため、両手でタッチしてしまったのだ。
もうヤケクソだから揉んでやろうかと思ったが、それはできなかった。
「音無鳴、可愛くなっても私のおっぱいが好きなんだね」
「ち……違いますよ」
「ん……触りたくないの?」
「え……それは……」
「あほ! そこ悩むなや! 自分彼女おんねんやろ! よその女のおっぱい触ってええ気になってたらあかんで!」
朝子さんの大声で、僕の『ラッキータッチ』が多くの方に目撃されてしまった。
でも……ある意味女装でよかったかもしれない。
「お二人は、もしかして僕たちのライブを見に来てくださったのですか?」
「そうだよ! 結衣に教えてもらったんだ」
満面の笑みの木村さん。木村さんも結衣さんと知り合いなの?
「でもね……朝子が音無鳴に話しがあるんだって」
にやけ顔で交互に僕と朝子さんを見る木村さん。何か悪だくみでもしているのだろうか。
「朝子さん僕にお話って?」
「ら……ライブが終わってからでええから! ま……まあ、頑張りや!」
2人は嵐のように去って行った。
もっと女装のことを突っ込まれるかと思ったが、そこは案外スルーだった。
もしかして、関西ではこれしきのこと当たり前なのだろうか。
そんなバカな事を考えつつ僕は、次々と来るお客様に笑顔を振りまいていた。
————————
【あとがき】
やっぱりラッキースケベがないと始まらない!
本作と舞台を同じくした新作を公開いたしました。
『幼馴染みもアイドルのクラスメイトも憧れの先輩も居ないインキャな僕にラブコメなんて似合わない。』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897223156
是非とも応援お願いいたします。
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