第133話 学園SNSの異変
合宿からはじまった音楽漬けの夏休みがあっという間に終わった。
例のごとく色々あったが『織りなす音』としても個人的にも成長が実感できる充実の夏休みだった。
——それはそれとして今朝は何だか様子がおかしい。妙に周りがざわついている。
皆んなと合流してもそれは変わらなかった。
「なんか、今日妙に騒ついてない?」
「私も思ってった」「凛も」「あーしは何も感じないけど?」
みんなが無言で時枝を見つめる。
「ん? なに?」
こんな時、時枝に意見を求めても無駄なのは皆んな分かっている。お約束ってやつだ。
「音無くん推しじゃないかな」
『『えっ!』』
穂奈美からボソッと爆弾発言が飛び出した。
「穂奈美、僕推しって一体どういうこと?」
滅茶苦茶気になる。
そして穂奈美が首をかしげて言った。
「みんな学園SNS見てないの?」
『『見てない』』
「そ……そう……こんなに普及しているのに少数派になるとは思わなかった」
確かに……っていうか『織りなす音』自体が少数派人間の集りのような気がするのは僕だけだろうか。
——穂奈美に促され、とりあえず僕たちは学園SNSを確認した。
「うおっ! 何だこれ? 師匠ばっかじゃん!」
「これ……この間のライブね……」
「なんで兄貴が……」
学園SNSが僕の写真で埋め尽くされていた。
厳密には他のメンバーも写っているが、僕を中心としたアングルの写真ばかりだった。
「あ……兄貴が鳴様だと……」
信じられないことに、コメントも僕に対する好意の声で満ち溢れていた。
具体的には『今日久しぶりに鳴様に会える』『今日も鳴様かっこいい!』などだ。
しかもしれっと男子たちのアンチコメが、女子たちにより撃退されていた。
「あーそれで、師匠のこと教えてくれってメッセージが多かったのか」
そんなこともあったのか! 教えてくれよ!
「音無くん元々女子から人気あったしね」
『『えっ!』』
またまた穂奈美からボソっと爆弾発言が飛び出した。
「衣織先輩と噂になる前はクラスでも音無くん推し多かったよ」
全然知らなかった。
「確かに師匠、ヒョロイけど見た目はイケメンだもんな」
「えっ! どこが?」
凛それは衣織に失礼だし、双子なんだからブーメランだぞ。
まあ、朝から妙に騒ついていた理由がよく分かった。
それと同時に嫌な予感がした。
——そして予感は的中した。しばらく落ち着いていた上履きへの悪戯と、机への悪戯が再開されていた。
でも、一体誰があんなにも僕の写真を撮っていたのだろうか。
確かにライブ中、ギャラリーにスマホで撮影されていた認識はあったけど、ここまで僕が中心だとは思わなかった。
面倒なことにならなければいいけど……ただただ祈るしかない僕だった。
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