第99話 波乱の幕開け
平和な1日だった。
昨日の小言の続きを聞かされながらも笑顔で登校し、昼休みにはギターをやめた理由を話すのに、衣織ん家に行く約束もこぎつけた。
まるで昨日の出来事が嘘のように穏やかな1日だった。
放課後までは……。
——その報せは美咲先輩によってもたらされた。
「あ、あ、あ、あ、あ、アン・メイヤー! アン・メイヤーがルナちゃんを訪ねて校門に来てるんだけど!」
『『アン・メイヤー!』』
アンがなぜ……つか、なんで学校が分かった。
混乱する部員の皆さんに昨日の出来事を話した。
「あはは、昨日はずっとルナだったんだ。やらかしちゃったね鳴……」
やらかしたって……原因の大半は結衣さんなのに。
早速、ルナに変装し僕たちは校門へ急いだ。
すごい人だかりだった。いきなり有名海外アーティストが学校に現れたらこうもなるだろう。
人混みをかき分け、アンの元へ向かった。
「アン、どうしたの?」
声色を変えてフランス語で話しかける。女子トーンに慣れていく自分が嫌だ。
「ルナちゃんだ」「ルナちゃんフランス語話してるの?」「スゲー!」「今日も可愛い」
ルナへの賞賛の声が聞こえてきたがちっとも嬉しくない。
「ルナ、やっぱりここの生徒だったのね。制服でそうじゃないかと思ったの」
制服で探したのか……ん……つか今の日本語だよね?
「アン日本語話せたの?」
「ええ、まあ……日本のアーティストの方と話す機会も多いから覚えちゃった」
昨日、僕がフランス語を話せるくだりで「よかった」とか言ってたから、僕はてっきり話せないものだと思っていた。まあそれはいい、それよりもアンがなぜ学園にまで訪ねて来たかだ。
「アン……今日はどうしたの何か私に用でも? お友達になって欲しいとか?」
遠慮なく日本語で返した。つかお友達って何を言ってんだ僕は!
「そうね……と……と……友達ってのも悪くないわね……」
伏し目がちに赤面するアン……まんざらでもなかったようだ。
「そうじゃないのルナ、今日は大事な話があってきたの」
「大事な話?」
なんだろうアンから大事な話って……実は鳴だってバレたのか。
「ルナ、私とギターデュオを組みましょう」
「え……」
アンの発言に周囲がどよめく。
アンとデュオ……ってなんでいきなり。
「昨日のあなたのプレイ……凄かった……私……忘れられないの……私にはあなたが必要なの!」
懇願するような瞳で訴えかけるアン。なんだこの誤解を招くような発言は……若干みんな赤面してるし、完璧に疑われてる。
女装で百合とか、普通にダメな人みたいじゃないか。
「ダメよ、ルナは渡さない」
今まで沈黙していた衣織がイキナリ参戦してきた。
「あなた……誰?」
美しい瞳で衣織を睨みつけるアン。
「私はルナのユニットメンバーの衣織よ」
負けじと美しい瞳で睨み返す衣織。
さっきまでの平和はどこかへ行ってしまった。
————————
【あとがき】
衣織とアンによるルナ争奪戦勃発か!?
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