第7話 急な言葉に
私とクラーナは、お風呂に入っていた。
寝ていたはずだが、色々とあったため、そうすることにしたのだ。
「ふう……」
クラーナは、私にもたれかかるようにしながら息を吐いた。
とても気持ち良さそうな表情だ。心から、リラックスしているのだろう。
「二人で入るのは、久し振りね……」
「そうだね。最近は、ラノアも一緒だからね……」
クラーナの言う通り、二人で入るのは久し振りだった。
最近は、ラノアも合わせて三人で入っているからだ。
もちろん、それが悪いという訳ではない。三人でのお風呂は、とても楽しいものだ。
だが、二人きりは別の楽しみがある。どちらも優劣はないのだ。
「でも、こういうことがあったら、いつも二人だよね?」
「それはそうね」
そもそも、こういうことがあるといつも二人で入っている。
そのため、実はそこまで日が開いている訳ではない。
ラノアが来る前までは、ずっと二人で入っていた。その前提があるから、久し振りのように感じているだけなのだろう。
「まあ、どっちでもいいわ」
「わっ……」
そこで、クラーナは身を翻して私に抱き着いてきた。
クラーナの顔が、私の顔と向き合うようになった。
そのまま、クラーナは私に顔を近づけてくる。
「ん……」
「ん……」
私とクラーナの唇が、ゆっくりと重なった。
やはり、この瞬間は言いようのない幸福感に包まれる。
「アノン……好き」
「ク、クラーナ?」
そこで、クラーナは耳元でそのようなことを呟いてきた。
その急な呟きに、私は少し驚いてしまった。
その愛の囁きは、もちろん嬉しいものである。しかし、急にそう言われると、とても混乱してしまう。なんというか、耐え切れないのだ。
「きゅ、急にどうしたの?」
「別に、好きだというのに理由が必要かしら?」
「必要という訳ではないけど……」
クラーナの言う通り、好きというのに理由など必要はない。なぜなら、好きだからそう言っているだけからだ。
だが、何もない時に言われると、中々くるものがある。何故かわからないが、とても恥ずかしいのだ。
「アノンは、私のこと好きじゃないの?」
「そ、そんなことはないよ。私はクラーナのことがす、好きだよ」
しかし、クラーナの質問には当然そう答えた。
言うのは恥ずかしいが、クラーナのことは好きだ。その気持ちを偽るつもりなどない。
「ええ、知っているわ」
「クラーナ……」
私の言葉に、クラーナは満面の笑みで返してくれた。
その笑顔は、とても可愛らしいものである。
そのような会話をしながら、私達はお風呂を楽しむのだった。
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