第5話 両側から
私は、クラーナとラノアと一緒に家で過ごしていた。
そこで、この家に幽霊がいるということを知らされたのだ。
その後、色々とあって、今は右手でクラーナ、左でラノアをそれぞれ撫でる両手に花の状態である。
さらに、私は二人から舐められることになっていた。ラノアが舐めるのはどうかと思ったが、クラーナの許可も出て何も問題はなくなったのである。
「それじゃあ、アノン、いくよ」
「う、うん……」
私の左の頬に、ラノアの顔が近づいてきた。
この瞬間は、中々緊張するものである。
「ペロ……」
ラノアの舌が、ゆっくりと私の頬を這ってきた。
生温かく湿った柔らかいものが、私の頬をなぞっていく。
その感覚だけは、クラーナのものと同じだ。だが、与えてくる印象は少し異なる。
当然ではあるが、クラーナの時のような気持ちにはならないのだ。なんというか、本当に犬にじゃれられているような感じである。
確かに、これは親子や友達でも問題はないだろう。それでも、少々恥ずかしいが、それはこの際気にしないことにする。
「ペロ……」
「うっ……」
そんな中、クラーナも私の右の頬を舐めてきた。
こちらは、いつも通り少しおかしな気分になるものだ。
同じ舐めるのでも、舐める人によってここまで異なる印象を受けるのは少し驚きである。
「ペロ……」
「ペロ……」
「うう……」
両側から舐められる。このようなことは、今までなかったことだ。
そのため、色々と変な感じである。だが、別に嫌という訳でもない。
「とりあえず……」
「あっ……」
「えっ……」
とりあえず、私は二人の頭に手を置いて撫でることにした。
基本的に、二人は撫でられるのが好きだ。そのため、撫でることにしたのである。
「ペロ……」
「ペロ……」
私が撫で始めると、二人は気持ちよさそうにしていた。
やはり、この選択は間違っていなかったようだ。
ただ、両側から舐められながら両側を撫でるという状況は、中々難しいものである。色々な所に意識がいって、さらに変な感覚に陥ってしまう。
「クゥン……」
「クゥン……」
そういえば、私達はこの家に関する心霊現象に関する話をしていたはずだ。
それが、どうしてこのような状況になったのだろうか。
しかし、そのおかげか、私の恐怖は少し和らいでいた。幽霊が、無害だと知ったこともあるだろうが、二人の存在が大きいだろう。
本当に、二人といると心が安らぐ。これなら、幽霊に怖がる必要はなさそうだ。
そんなことを考えながら、しばらく私達はそうしているのだった。終わった後、私の頬はすごいことになっていたことは言うまでもない。
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